「ブラック企業」を自称するウェブ制作のセブンコード社が、労働基準監督署に突入された際の一部始終を動画にして公開している。公開日の4月1日はエイプリルフールだが、どうやら嘘ではない模様だ。
動画は5分から10分の長さで、9話に分けて公開。労基署の監督官が立ち入り調査し、セブンコード社社長と面談している様子が見られる。途中、内容はカットはされていない。
退職者の告発がきっかけ? 監督官にモザイク
動画は監督官の了承を得て撮影されたようだが、監督官の姿にはモザイクが掛かっている。
冒頭、監督官は「ちょっと、長時間労働みたいなお話が来ていまして、調べざるをえない」と切り出している。退職者から告発があったようだ。そして監督官は、こう続ける。
「我々は基本的にアポなしなので、一般常識的に考えると外れた部分もあるかもしれませんが、ありのままの状況を拝見させていただくということで、こういう手法を取らせて頂いています」
その後、会社として「労働時間の管理がされていないのでは」「残業に対価がきちんと支払われていないのでは」「サブロク協定は結ばれているのか」などの指摘が相次ぐ。
特に指摘を受けているのは「長時間労働」についてだ。同社ではみなし残業時間として30時間の設定がされているが、雇用契約書に「内訳」の記載がなかった。つまり「基本給」と「残業代」の区分が明確でなかったわけだ。
「(雇用契約書に)これ(=支給額)だけ書いてある会社さんも結構多いんですよ。でもこれだと、裁判やったら勝ち目ないっていう判例は出ていますね」
監督官「信頼関係って、それほど脆いものはないんですよ」
ただ、社長にも言い分はある。労働時間管理にもコストはかかるし、同社はWebの企画や制作がメインなので、時間に比例して成果があがる仕組みではない。IT企業の経営者がよく抱えるジレンマだとも言える。
「法律をしっかり守ると事業が成り立たなくなるし、現実に合わせると法律に不備が出てくるし、結局はしっかりルールが決まっていても、従業員との信頼関係だと思うんですよね」
監督官も「よく聞く悩みだ」としながらも、「我々みたいな仕事してると、信頼関係って、それほど脆いものはないんですよ」と語気を強める。信頼している間は良いが、何か信頼が崩れることがあると、法律の問題にされてしまうからだ。
「そういう話を日々聞いてますからね。だから信頼関係を否定するわけじゃないんですけど、法律の土俵にのせられたら、突っ込みどころが満載の場合ね、太刀打ち出来ないと思うんですよ」
こんな感じで、監督官と社長の応酬が続いていく。
「働く側も経営者側も参考になるのでは」
どのような結論になったかはサイトを見ていただくとして、なぜこのような赤裸々な動画を公開するに至ったのか。キャリコネニュース編集部が濱野秀昭社長に聞いてみると、こんな話をしてくれた。
「都合のいいように編集してると思われたくなかったので、ほぼすべてのやりとりを公開しました。もともとブラック企業だったんで、本音を伝えよう、来たということも包み隠さずに言おうと動画を撮ったんですけど。ナマの、本当に来た話なので、働く側も経営者側も参考にしていただけるんじゃないのかなと思います」
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