2015年03月31日 20:31 弁護士ドットコム
東京都渋谷区議会が3月31日、全国初となる「同性パートナーシップ証明書」の発行を定めた条例を、賛成多数で可決した。4月1日施行で、証明書発行は夏以降の見通し。可決を受け、議会を傍聴していた性的少数者たちが渋谷区の庁舎前で記者会見した。「THANK YOU, SHIBUYA!」「祝・同性パートナーシップ条例」と書かれた横断幕を持ち、笑顔で記者たちの質問に答えた。
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元タカラジェンヌの東小雪さん(30)=写真中央右=と、パートナーの増原裕子さん(37)=写真中央左=は、並んで記者たちの質問に答えた。女性同士カップルの2人は2013年、東京ディズニーリゾートで初めて「ウェディングドレス同士の結婚式」を挙げ、話題を呼んだ。条例化の動きを聞きつけて、4カ月前に渋谷区に転入してきた。2人は現在、一緒に会社を経営し、LGBT関連の講演や企業研修などを行っているという。
東さんは満面の笑みで次のように述べた。
「証明書が発行されることが決まったら、すぐに裕子さんと取りに行きたいと思います。私たちは見た目が女性同士なので、病院などでなかなか家族として扱われないという問題があります。交通事故など万が一にそなえて、証明書は運転免許と一緒に、いつも携帯したいと思います。
異性と結婚する人も、同性と結婚する人も違いはありません。これは受け入れる側の理解と、社会制度の問題です。私と裕子さんが結婚しても、驚かれないような世の中になってほしい。結婚したい人が結婚できるように、選べるようになってほしいと思います」
一方、増原さんは次のように話し、今後の展望に期待していた。
「これはスタートの一歩ですが、とても大きな一歩だと思っています。今までマイナスだったのが、これでちょっとゼロに近づきました。
条例のような動きに反対の方もいるでしょう。でも、日本には、性的少数者のことをよく知っていて、それでも断固として反対という人は少ないと思います。
知らないから、『何となく恐くて、何となく気持ち悪い』『だから、からかって良いんだ』というような、何となくの連鎖で傷つけられている当事者はたくさんいます。
私もその一人でした。
性的少数者が、すぐ隣にいる人たちなんだよと分かってもらえれば、苦しむ人や苦しむ家族が減っていくのかなと思います。今日の議会でも、条例には『アナウンスメント効果』があると指摘されていましたが、その通りだと思います。広がりに期待しています」
フェンシング元女子日本代表で、今は男性として活動している飲食店経営・杉山文野さん(33)=写真左から2人目=は、13時からの本会議を傍聴するため「朝8時から並んだ」という。性的少数者として渋谷区の議員らに助言していた杉山さんは「この条例にはたくさんの思いが詰まっています。かかわった全ての人に感謝したいです」と話した。
今回成立した条例について、議会では「重要なことを規則で決めることになっており、まだ未完成だ」という指摘も出ていた。こうした点について、杉山さんは次のように述べていた。
「今後、僕たちが想像もしていないような課題が出てくる可能性もありますが、今まで隠れていたことが表に出てくることも、大きな一歩だと思います。
僕たちは『世の中を変えてやろう』と立ち上がったというよりも、『普通に生活をしたい』と思っているのに、その手段がなく、声を上げるしかなかったというほうが正確です。『好きな人と一緒にいたい』と言ったとき、こんな大きな話題にならないようになればと思います」
杉山さんはひげをはやしていることもあり、一見すると男性にしかみえない。だが、生殖器を除去する手術を受けていないため、戸籍の性別変更ができず、「戸籍上は女子」なのだという。
「いま、4年半一緒にいるパートナーはストレートの女性です。私たちは戸籍上、女子同士のため、結婚できません。
性別違和を解消するために手術を受けるのは問題ありません。でも、本当なら手術を受けたくないのに、パートナーと一緒にいるために、お金、身体、心もすごく負担をかけて、生殖器を取り除く手術を受けなければならないのは、ちょっと違うんじゃないかなと思います」
杉山さんはこのように、「性同一性障害特例法」に定められている性別変更の要件に疑問を投げかけつつ、「不必要な手術をしなくても、パートナーシップ証明によって、パートナーと一緒にいられるなら、それに越したことはありません」と話していた。
元豊島区議員で、自らゲイだとカミングアウトしている石川大我さん(40)=写真左端=は、「行政は往々にして『前例がないと動かない』ものです。そういう意味で今回、渋谷区で条例が成立したことには大きな意味があります。ゼロとイチは全然違います」と述べ、今回のような条例を各地に波及させていきたいと、希望を語っていた。
(弁護士ドットコムニュース)