はてな匿名ダイアリーに3月29日に寄せられた「大企業で働くために必要なこと」というエントリーが、ネット上で話題を呼んでいる。筆者はこの12年で、時価総額10位以内に入る上場大企業2社に勤務したと自称する人物だ。
この経験から、筆者は大企業でうまくやっていく処世術を説いている。まず前提として理解しなくてはいけないのは、「経営層、人事部、あなたの上司、同僚はあなたの職業人生に興味はありません」ということ。代わりの働き手はたくさんおり、その人の未来や仕事は他人には重要なことではないという。
「貴方が仕事で会社に影響を与えることは万に一つもない」
これを頭に入れた上で、大企業でやっていく上で必要なことが3つある。1つめが「上司に楯突かず、上司が望むアウトプットをきちんと出す」ということ。仕事は無難にこなせばいい。難しい内容でも、自分の頭で考えて上司に相談しながら進めるといい、とする。
2つめが「人間関係、法令違反などのトラブルを起こさない」。上司や同僚とトラブルを起こさないだけでなく、会社の不満も言わない。「不倫とか横領とか問題外です」としている。
そして3つめが「常にニコニコしながら、挨拶、世間話、仕事してます報告をきちんと自分からする」。周囲に好印象を与えることが重要で、主張も波風立てないよう、提案という形でする。人当たり良く無難にやり過ごすことがいいようだ。筆者もこう言い切っている。
「驚くほど、個性やリーダーシップなんて必要ありません。実際の現場ではとんがった個性は邪魔なだけです。まっっっっったく意味ないです。貴方が仕事で会社に影響を与えることなんて万に一つもありません」
ただし、この3つだけで生き延びると、40歳になったときに何の専門技能も身につけていない状態にもなりかねない。そのため3原則を守った上で、外国語の勉強や資格の取得などに励み、転職市場での自らの価値を高めるべきだとする。
「昨今リストラにあって、就職先が見つからない40歳以上の人たちというのは、1~3だけを忠実に守ってきたけど、技能を身につけてこなかった人達です」
「求められるのは工業製品のような人材」と賛同の声
そういえばリーマンショックのときに、リストラされた人たちが「これまでコツコツ会社に尽くしてきたのに」「私がどんな悪いことをしたんだ」と雑誌などで嘆いていた。この3つを守ってきたのに、なぜという思いがあったのかもしれない。
このエントリーに対しては、300件近いツイートが寄せられている。特に大企業経験者は納得しているようで、銀行員の男性は「概ね当たってるかと。他人は自分に関心が無い、という点が実は一番重要」と投稿していた。
「本当にこんな感じだから、優秀な人は大企業に行かない方が良い」と、大手志向の若者に釘を刺す書き込みも。ビジネスのシステムができ上がっているので、問題を起こさずに安定して利益を出す「工業製品」のような人材が求められる傾向があるという。
中年以降のキャリアパスについても、「40前後がでかめの分岐点なとこは上司達を見てて思った」という人がいた。大企業では、ベテランでも専門スキルがない人が珍しくないようだ。
一方で、「じゃあ就活で求められたことは何なんだ」という指摘もあった。就活ではさんざん個性やリーダーシップを問われながら、入社後の仕事は無難に粛々とこなすだけだとすると、矛盾を感じてしまうのも仕方ない。
「中小企業でもまったく同じ」という指摘も
ただし、この3つの「必要なこと」は、企業規模の大小関係に関係なく、「中小ならこれが無いなんてことはありえない」という意見も多い。かえって少人数の顔の見える組織の中でこそ、上司に楯突いたり、人間関係でトラブルを起こしたりすることは、死活問題につながりかねない。
結局、サラリーマンは会社の規模に関係なく、このようなプレッシャーの中で生きていかなくてはいけないのか。もっとも独立してフリーランスになったところで、「クライアントに楯突かない」「トラブルを起こさない」「ニコニコしながら報告」は同じだと思うのだが。