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【今宮純】F1マレーシアGPドライバー採点&短評

2015年03月31日 13:00  AUTOSPORT web

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メルセデスの牙城を単騎で打ち破ったフェラーリのベッテル。チャンピオンシップのゆくえも、これで一躍面白くなった。
今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。第2戦マレーシアGPの週末を通して、20人のドライバーのなかから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視してチェック。
(最高点は☆☆☆☆☆5つ)

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☆ ダニール・クビアト

 開幕戦は出走できず、ここが“レッドブル・デビュー戦"。雨の予選で先輩リカルドと並ぶ3列目6位をしっかり確保。ホット条件レースではブレーキとPUが苦しく、ヒュルケンベルグと絡まりながらも耐えきり9位入賞発進。まとめ上げた移籍デビューレース。

☆☆ ロベルト・メリ
 極貧(失礼)マノー・マルシアが今季初完走15位、第3のスペイン人メルヒ大健闘。昨年チルトンと同位(!)、14年仕様フェラーリPUには走破できる信頼性があった。資金も人材も器材もすべてかわいそうなくらいないけれども闘志はある。ビアンキに見せたいような戦いぶり……。

☆☆ ニコ・ロズベルグ
 走行ラインやタイヤのことまで、飛びかう“教えてよ"無線会話。TVにそのままOAされる前になぜ担当エンジニアがほしがる癖のある彼に(事前に)情報を知らせてやらないのか。そうすれば聞き苦しい無線会話も流されずに済むのに。2戦連続ハミルトンに予選タイム0.5秒遅れ、“14年PPキング"頑張って!

☆☆☆ カルロス・サインツJr.
 2ストップを遂行したのはベッテルとペレスと彼だけ。15位グリッドから8位ゴール“アップレース"はルーキーの実力証明。トロロッソ勢ふたりには話題性を超えるタレントが見てとれ、これからを注目したい。共通するのはスライドに俊敏な反応力と接近戦の見切り能力、この二点は並のルーキーではない。

☆☆☆ バルテリ・ボッタス
 彼もこれが開幕戦。パドックで見るたびに歩く姿勢や歩幅を気にしたのは背中と腰の痛みが完全に治ったか、それで解るから(インタビューしても「大丈夫」と言うに決まっている)。バリ島で静養、ほぼ90%完治したようでもマッサに予選でまた先行された。やはり残りの10%が不調なのだろう。ウエットQ3で腰のグリップセンサーがやや鈍っていると思えた。それでもレース残り2周でマッサをパス、体調復活=ウイリアムズ復調へ。

☆☆☆ ダニエル・リカルド
“スマイリー・リカルド"から笑顔が消えかかっていた。ドライバーズパレードでもそうだった。ウエット予選4位、オフから初戦まで続いたルノーPUの低回転域ドライバビリティ不安定症状は改善された。が、ドライレースではブレーキ変調に加えフロントウイング破損と傷だらけの大苦戦。それをカバーする懸命なドライビングにいつもと違う技を発見(エースの自覚といってもいい)。

☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
 初日高速S字の5~6コーナーでコースオフを見たとき、攻めまくるアロンソの意気地を感じた。マクラーレン・ホンダ初実戦、コンサバにいく手法はとらず限界を探り熟成スピードを早めねばならない。ややバトンと異なるアプローチは予選でさらに明白に。Q1の3回アタックを毎周攻め続けてタイムダウン、鞭を入れるたびに珍しくミスが。スタートから斬りこみ19周目に8位上昇後、21周リタイアの「実戦限界実験」、これを糧にするのがチームの仕事。それにしてもアロンソが乗るとMP4/30がタイム以上に速く映るのは、すべての操作がミリセコンド次元のシャープな感覚だから(だろう)。

☆☆☆☆ キミ・ライコネン
 一目瞭然。“手探りステア"が消えフロントがシュッと切り込めるターン挙動で初日2位キープ。これがベッテルを刺激したと思う。互いに高めあう新コンビに期待がかかった予選、Q2アタック・タイミングが外れて11位ノックアウトに。スタート後の混戦の中でナッセにタイヤを切られ、後方18位までダウン。そこからの4位挽回はただの4位とはわけが違う。

☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
 2位敗因はどこにあったのか。金曜に合計20周しかできず、レースペース(タイヤチェック)確認が充分できず、セット変更も実践できず。これがレースに影響し彼が嫌うアンダーステア傾向が出ていた。戦略ミスを指摘するよりもこれ、しかし今年の彼は昔ほどふてくされずに2位を受け入れた。ニコにまたも0.456秒大差をつけるPP、濡れた1コーナーに307km/h(!)で飛び込むなんて今年のルイスは「超速」――。

☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
 平均年齢“Uー20トリオ"、22歳ナッセと20歳サインツJr.と17歳フェルスタッペンたち。3人ともヘルメットの中の目つきが鋭い(僕は新人のここを注視)。街ですれちがったら普通の子たちと同じでも、コクピットに収まるときっぱりした態度に変わる。17歳最年少入賞7位、永久不滅記録を刻んだ彼、かなり難しいレース展開だっただけに価値がある。初めての雨予選Q3で獲得した6位も同じだ。新人最初のウエットは実力測定の場、そこで17歳新人は近代F1史上の最高順位を記した。

☆☆☆☆☆+L セバスチャン・ベッテル
 フリー走行でスピン、レッドブル全盛時代にもしばしばオーバープッシュすることがあった。「戻ってきたな」そう思わせたFP2、11コーナーのスピン。もっと行ける手ごたえがあるからそこまでやった。SF15-T&PU特性は高温に強さを秘め、タイヤ適正発熱をうながせながらも、PU面での冷却マージンがパフォーマンスアップを可能にする。「今季2~3勝が目標」と掲げた首脳陣の狙いは高温マレーシアとバーレーン、真夏ヨーロッパのどこか。有言実行、移籍2戦目でフェラーリ222勝目、自身40勝目(A・セナまであとひとつ)。ドイツ&イタリア国歌二重奏を聴くベッテルは夢の中にいた。

☆なし
他9人