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F1現地直送:ルノー、ワークス復帰の噂を否定せず

2015年03月31日 12:40  AUTOSPORT web

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トロロッソ代表とレッドブル代表に挟まれた、ルノーのシリル・アビデブール
マレーシアGPでは木曜日のFIA会見に続いて、金曜日のFIA会見もメディアセンターに併設された会見場は熱気に包まれていた。この日、主役を張ったのは、ルノーのマネジングディレクターを勤めているシリル・アビデブールだ。

 今季ルノーのパワーユニットには開幕戦からトラブルが相次いでいる。オーストラリアGP初日にダニエル・リカルドのパワーユニットに問題が発生して1回目のセッション終了後に、早くも2基目を投入。その後もマックス・フェルスタッペンのエナジーストアとコントロール・エレクトロニクスに問題が発生して交換を余儀なくされ、マレーシアGPではクビアトが2基目のICE(エンジン本体)を投入している。

 このような状況を受けて、レッドブルのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコが「ルノーのおかげで、我々のシーズンはもう終わってしまっ たようなものだ」と怒りをぶちまければ、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も「ルノーは、おそらくメルセデスに対して100馬力は劣っている」と、長年パートナーを務めてきたルノーを批判。
 すると今度はルノーのアビデブールが、フランスのメディアに対して「嘘をつくパートナーと仕事をするのはつらい」と反撃した。

 金曜日の記者会見が注目されたのは、そのような伏線があったからだ。会見にはアビデブール、ルノーを口撃していたホーナー、そしてルノーが買収しようとしているのではないかと噂されているトロロッソのフランツ・トスト代表が出席。その3人が前列の同じテーブルに座るという状況で、会見はスタートした。

 冒頭に、ホーナーが「彼(アビデブール)は本当に勇気のある人間だ。レッドブルとトロロッソの間に座るんだから」と皮肉たっぷりのコメント。これに対してアビデブールは苦笑いするにとどまり、明らかに居心地は悪そうだった。

 アビデブールは記者から「ニューウェイを嘘つきと言ったのは本当ですか?」と問われると、「似たような質問を以前にも受けたが、その答えは文脈を無視して作られてしまったものだ。だから、今回その質問には答えたくない」と防戦一方となった。

 そんなアビデブールが語気を強めたのが、F1から撤退するのではないかという憶測に対する質問だった。「我々が多くのオプションを検討していて、今後もこのようにルノーが不当に悪い評価を受け続けるのなら、F1からの撤退もありうる」と、言い切ったのだ。

 その一方で、トロロッソのトスト代表は「(ルノーがチームを買収すれば)トロロッソにとって次のステップを踏み出す素晴らしい機会になると考えている。(ルノーという)マニュファクチャラーに所有されれば、コンストラクター選手権で5位以内の座に入るという目標に一歩も二歩も近づくことになる」と語った。隣に座っていたアビデブールが、まったく否定しなかったことからも、すでにワークスチームについてルノーから何らかのアプローチがあるのではないかと考えられる。

 さらにトロロッソ買収について質問されたアビテブールは「いまはワークスチームとなってマシンを作ることより、供給しているパワーユニットをしっかり制御することが優先すべき問題だ」と、明言を避けた。

 アビデブールは昨年までケータハムのチーム代表を務めていた人物で、ルノー(正確にはルノー・スポールF1)内で絶対的な権限があるわけではなく、本社とF1チームとの調整役のようなポジションにある。したがって、彼が語る内容をどこまで信用していいのかは大きなクエスチョンマークがつく。それは記者席に座っていた多くのジャーナリストだけでなく、アビデブールの両隣にいたホーナーとトストも感じていることではないだろうか。

(尾張正博)