100円ショップは円安の影響を受けて、商品の仕入れコストが上昇し、人件費も膨らみ収益が圧迫されている。2015年3月27日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、増税後に苦戦を強いられる100円ショップ業界を取材していた。
業界3位のキャンドゥは、渋谷パルコに新業態の低価格雑貨店「OHO!HO!(オホホ)」をオープンした。事業担当の沼澤理衣子ディレクターは、「今までの100円均一にはなかった、低価格のライフスタイルを提案する店です」と話す。
差別化図り新業態続々。お客は「歓迎」しているが…
100円商材を扱う店は年々増えており、差別化のために新業態を始めた。ターゲットは20~30代の女性で、従来にはなかったバスアイテムやギフト商品、外国人観光客を意識した小物まである。
商品の種類は約2000点で、価格は100円から3900円までだが、500円以下の商品が8割を占める。客からは「可愛くて、100円じゃなくてもこのくらいなら衝動買いする」と好評で、今後はファッションビルや駅ビルなどの商業施設を中心に店舗を広げる計画だ。
しかし同事業担当の大谷知史部長は楽観しておらず、厳しさを覗かせる。
「今まではお客様がどの商品を見ても100円という安心感で購入していたが、今回は商品と価格のバランスが適正かどうか、お客様の目を意識して商品構成を考えないといけない」
100円ショップ「meets.」や「SILK」を展開する大阪のワッツは、店舗ブランドを「ワッツ」に統合した。若者向けの雑貨を増やし、掃除用具の売り場を縮小。ランチョンマットは主婦向けだった無地などに加え、東南アジア風の商品を投入した。客の声は「ふつう500円くらいするもの。これなら何個か欲しくなる」と好評だ。
しかしワッツの高澤直樹氏によれば、神戸市のワッツハーバーランド店ではリニューアル以降、売り上げは倍以上に伸びたものの、依然厳しい状況だという。
「円安で商品の仕入れ値があがり、粗利が採りづらくなっています。人件費も、最低賃金が毎年更新されて上がっていく中で、商品の単価を変えられない商売なので、やりくりが難しくなっている」
100円を無理に維持すれば「品質」が下がっていく?
ワッツでは、中国製だったバスタオルをベトナム製にしたり、一部の商品で内容量を減らすなどして対応している。ドイツ証券の小売シニアアナリストの風早隆弘氏は、
「これからインフレ時代を考えたときに、均一でものを売る商売としてはコスト高で非常に厳しい環境になる」
と解説。100円均一を安易に維持しようとすると、「100円でも利益が出る商品を仕入れるということですから、単純に、品質が下がっていく」と指摘した。
しかし、物価の上昇が見込まれる中、価格が変わらない強みを生かすことで、市場のニーズを取り込む千載一遇のチャンスにもなるという見方もある。
「今後、インフレもしくは所得格差がますます広がると予想されます。100円で本当に価値あるものを提案できる企画力・仕組み・規模のある会社だけが、果実を受けられる」
100円ショップの生き残りを賭けた戦いは、更に激しさを増しそうだ。デフレ脱却で物価が上がれば、100円ショップは庶民の味方として相対的な価値がさらに上がるだろう。どこまで踏ん張って良い商品を提供してもらえるのか、注目したい。(ライター:okei)
あわせてよみたい:「人を大切にする経営」とは何か