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<ドイツ旅客機事故>副操縦士の意図的墜落? 他者まきこむ「自殺」は犯罪でないのか

2015年03月30日 17:52  弁護士ドットコム

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ドイツ旅客機がフランス南東部で墜落し、乗客乗員150名が犠牲になった事故で、ドイツ人の副操縦士が「意図的に飛行機を墜落させた可能性」が疑われている。


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報道によると、フランス検察が同機のボイスレコーダーを分析したところ、墜落前の数分間、同機を操縦していたのは副操縦士で、機長はコックピットから閉め出されていたことがわかった。機長がコックピットに戻すよう要求しても、副操縦士からの応答はなかった。また、副操縦士の呼吸音が聞こえていたとのことで、意識を失った可能性は小さいとみられている。



もし、副操縦士が意図的に飛行機を墜落させたとしたなら、乗客と乗員はその道連れに巻き込まれたという見方もできそうだ。記者会見で、自殺の可能性について問われたフランスの検察官は「自殺は普通1人でするもの。150人を道連れにしたのは、自殺とは言えない」と話したという。



もし仮に日本で、他者を巻き込む形で自殺をし、道連れに殺してしまった場合、何らかの罪に問われることになるのだろうか。刑事事件にくわしい冨本和男弁護士に聞いた。



●他者を巻き込む自殺は「殺人罪」になりうる


「まず、自殺そのものは、犯罪ではありません。しかし、他人を巻き込んで死なせたら、話は別です。



自殺が犯罪ではないからといって、他者の生命というかけがえのない利益を侵害することは、正当化できません。



もし、巻き込まれた他人が死ぬことをわかったうえで、『それでも構わない』と思って自殺し、他人を殺してしまったら、それは『殺人罪』になります」



いくら自殺といっても、他人を巻き込んで一緒に殺してしまえば、殺人罪になるわけだ。



なお、飛行機を墜落させて人を死亡させた場合は、「航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」により、刑法の殺人罪より重い罪になる可能性があるという。



「ただし、死亡した被疑者が、実際に処罰されるのかというのは、別問題です。



被疑者が死亡している場合でも、警察の捜査や書類送検は行われます。しかし結局のところ、書類を受け取った検察は『不起訴処分』を選択することになります。



これは、被疑者が死亡していると、裁判をするための前提条件を欠き、起訴することができないからです」



有罪というためには、刑事裁判をする必要があり、そのためには被告人が生きていることが前提というわけだ。なんともやるせない話ではあるが・・・。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp