日本最大の総合電機メーカーである日立製作所を辞めたエンジニアの男性が、ツイッターに転職を激しく後悔する内容を投稿し、注目を集めている。
この男性は、京都大学から新卒で日立に入社。3年ほど在籍し、昨年1月に退職した。その際に、はてなダイアリーに退職エントリーを投稿している。
「日立の優秀な技術者たちよ. 価値を失う前に転職せよ. 社会はあなた方を求めている」
そんな勇ましい提言を掲げ、自分も能力の1割ほどしか発揮できていないと不満を募らせる。このまま残ると転職市場で自分の価値がなくなってしまう懸念があるので、リスクを最小化するために若手のうちに転職する必要がある、という内容だ。
「なぜ辞めたんだろうか。つらい」
この記事は当時「退職エントリの中でも、なかなか読ませる内容」などと、ネットで大きな話題となった。筆者の活躍に期待を寄せる声がある一方で、自らを「生来のカリスマ」などと呼ぶ筆者に懸念を示す人もいた。
「他を知れば日立がいかに守られた環境であるか知るのやも」
どうやらその懸念は的中してしまったようだ。筆者は転職から1年と少し経った3月24日ごろからツイッターに会社への不満を漏らし始め、27日にはついに「壊された。転職するんじやなかった」と思いを打ち明けた。
「日立の方が遥かに良かった。なぜ辞めたんだろうか(…)つらい」
前職の日立では研究所に所属し、国際学会での発表や海外出張もあった。しかし転職先は商社系の大手IT企業の子会社で、営業力もなく開発環境も前職と比べて劣っている。待遇面も思わしくなかったようだ。
「もうこんな仕事したくない。させるならお金ほしい。なんでこんな奴隷同然の搾取をされなきゃならないの」
年功序列で給料の上がる日立が「羨ましい」という。日立は今年の春闘で3000円のベースアップもあった。「日立辞めなかったら今頃どうなってたかな。考えるだけで辛くなる」と、かなり落ち込んでいる様子だ。
「隣の芝生は青い」は世の常なのか
現在の会社はコアタイム制で、決まった時間は会社にいないといけないが、日立の同期は裁量労働制。「おれだけ裁量労働じゃない」「転職は完全に失敗だった」「辞めたい」と、後悔は果てしない。
「まじ部長課長どころかブログで影響与えてしまった副社長レベルにも土下座で謝るので日立に戻りたい」
一連の投稿はネット上で話題に。「離れてみて分かる大企業のよさ」を指摘する声が多い。
「日立製作所本体ともなれば福利厚生も含めると、技術系でより待遇のいい会社は日本に数えるほどしかないんじゃないですかね」「隣の芝生はなんとやら」
リサーチ能力の低い人が恵まれた環境にいるなら、転職しないほうがいい、という指摘もある。特にIT業界では、入社してみたら事前に聞いていた話と違い、酷いプロジェクトや客先に放り込まれることがあるという。
「転職エージェントの甘言に乗せられた人の結末」という見方も。退職時のブログでは、エージェントに「あなたはまだ若いし才能があるのだから、リスクを恐れずに挑戦した方がいい」と言われて転職を決めたと書いていた。
変に鵜呑みにせず、自分で調べたり考えたりして納得してから転職するべき、ということなのだろう。ちゃんと賃金交渉していれば、「奴隷同然」の給料ということもなかったはずだ。
「日立以外にも良い会社たくさんある」
もっとも退職時のブログの書き方からすると、この男性は日立に居続けたら、それはそれで後悔していそうだ。ネットにも、単純に日立も今の会社もどちらも合わなかっただけ、と指摘する声も少なくない。
「日立以外にも良い会社たくさんあるので、いまのところさっさと辞めて転職すればいいと思う」「失敗じゃないプラマイゼロ。次行けばいい」