セント・ピーターズバーグで開催されたベライゾン・インディカー・シリーズの開幕戦。29日に決勝レースが行われ、チーム・ペンスキー同士のバトルを制したファン・パブロ・モントーヤが勝利した。佐藤琢磨(AJフォイト)は、13位で開幕戦を終えている。
ポールスタートからレースをリードし続けたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が2年連続の優勝を飾ると見えていた。しかし、3回目の、そして最後のピットストップを1周先に行った彼のチームメイト、ファン・パブロ・モントーヤが燃料補給を少なくすることでピット作業の時間を短縮、トップをパワーから奪った。
2位に下がったパワーは3秒以上もあった差を削り取り、直角・左コーナーのターン9でオーバーテイクを仕掛けた。モントーヤがアタックを想定していなかった場所でアタックすることでトップ奪還を狙ったのだ。
意表をついたアタックではあったが、モントーヤはそれに気づいてギリギリまでラインを寄せた。そして両車は接触! パワーのフロントウイングからパーツが弾き飛んだ。モントーヤはトップを守り、そのままチェッカーフラッグを受けた。
「ブラックタイヤでスピードがあった。それが今日の勝負の鍵だった。それで2番手にポジションを上げ、最後のピットストップではレッドタイヤを装着した。そこからはできるだけタイヤを労ってペースを落として走り、勝負の時に備えた。新しいエアロキットを装着してのレースは本当に楽しかったよ」とモントーヤは幸先良いシーズンスタートを喜んでいた。
「ウィルのアタックはミラーで見ていた。でも、あの距離からじゃアタックしてもパスは無理だ。トップの座をあそこで明け渡すつもりはゼロだった。真横まで並ばれたんなら譲るけれど、こっちがもうターンインしてた時でもウィルはまだ全然後方だった。チームメイト同志でぶつかったのは良くなかった。でも、それもレースだろう?」と、してやったりの勝利を飾ったモントーヤは笑いが止まらない様子だった。
パワーはマシンにダメージを受けたために逆転が難しくなった。もっとも、パワーは自分の幸運に感謝すべきだろう。モントーヤとの接触で自らのパーツが弾き飛んだが、その破片を踏んでもタイヤはパンクしなかった。勝利は逃したが、彼は2位でゴールすることはできた。
「あそこしかチャンスはなかったんだ。最終コーナーからメインストレートでファン・パブロの方が速かった。だからセオリー通りにターン1でパスするのは不可能だった。パスの難しいコーナーで仕掛ける。そうするしか逆転のチャンスはなかった。だからトライした。ウイングを壊さなかったら、もう一度アタックできたかもしれないのに……」とパワーは手に入れかけていた勝利を逃して悔しそうだった。
3位はトニー・カナーン。新エアロキット装着のマシンを思うように仕上げられずに苦戦していたチップ・ガナッシ・レーシングだったが、カナーンはセント・ピーターズバーグを得意としており、それが実戦で発揮されていた。優勝こそないが、過去に5回も表彰台に上っているのだ。
「“マシンを壊さずゴールしろ”とチップ・ガナッシに言われていた。今日は何も起こらないように慎重に走り続けていた。3位フィニッシュならポイントも多いし満足だ」とゴール後の彼は語っていた。
今日の勝利はモントーヤのインディカーでの13勝目で、セント・ピーターズバーグでの初勝利。優勝は昨年7月のポコノ以来で、ロードコースでの優勝は1999年9月のバンクーバー以来だ。
4位はエリオ・カストロネベスで、5位はサイモン・ペジナウ。チーム・ペンスキーの4人がトップ4グリッドからスタートしたレースだったが、彼らは決勝レースでトップ4を独占することはできなかった。しかし、4人全員がトップ5でゴールする強さを見せた。6位はセバスチャン・ブルデー(KVSHレーシング)。ここまでが全員シボレーだ。
ホンダ勢トップはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)の7位だった。スタートでブルデーと接触して18番手まで後退。そこからの7位フィニッシュは彼ならではの粘り強い戦いぶりによるものだった。
ハンター-レイ以外のホンダ勢ではジャック・ホークスワース(AJフォイト)が8位、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)が10位でゴールした。
佐藤琢磨は13位での完走となった。5番グリッドからのスタートで4番手に浮上し、その後5番手にポジションを戻して序盤を戦っていた。マシンの仕上がりは良いものと映っていた。しかし、33周目のリスタートで前方に混乱が発生。ブルデーと接触してフロントウィングを壊し、最後尾まで後退を余儀なくされた。
ホークスワースがチームにひとつしかないスペアのウイング・アッセンブリーをすでに使っていたため、琢磨はリタイアしていたカルロス・ウェルタスのウイングをデイル・コイン・レーシングから借りて戦う事となった。
ところが、コインのウイングは装着しているパーツが異なっていたため、空力バランスが崩れてしまい、琢磨は序盤と同じ戦闘力を発揮することができなかった。ホークスワースの終盤の猛チャージを見ると、同じだけの力が琢磨にも備わっていたと考えらるだけに残念だ。
「スタートからのマシンには速さがありました。少しずつ離されちゃってたかもしれないけど、上位に残って戦えるペースは保てていました」と琢磨。次戦ニュー・オリンズでもホンダ勢でトップを行くマシンの仕上がりを実現して欲しいものだ。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)