開幕戦で11位完走を果たしたときの新井康久(本田技術研究所取締役専務執行役員四輪レース担当)が最初に口にしたコメントは、こうだった。
「大変、疲れました」
それから2週間後のマレーシアGP。レース後、チームハウスから出てきた新井総責任者の第一声は次のような言葉だった。
「とても残念」
新井総責任者が残念と語った理由のひとつは、開幕戦ではほとんどできなかったレース中のバトルができていたことだ。15台しかスタートできなかったオーストラリアGPと違い、マレーシアGPは19台がスタートを切った。スタート直後の1~2コーナーにかけてのポジション争いで、フェルナンド・アロンソが早くもフォース・インディアのペレスをオーバーテイク。手に汗握るバトルはセーフティカー明けにも待っていた。
次にマクラーレン・ホンダの前に現れたのは、トロロッソとレッドブルのルノー勢である。16周目から20周目にかけて、アロンソはルノー勢とほとんど同じペースで走っていた。しかし、このバトルでアロンソのERSが悲鳴をあげ「冷却系に問題が発生したため、レースを止める決断を下した」」(新井総責任者)という。アロンソは9番手を走行していながら、21周目にスローダウンしながらピットイン。そのままリタイアしなければならなくなった。
これでジェンソン・バトン1台だけとなったが、そのバトンもフォース・インディア勢と激しいバトルを展開。しかし、その直後の41周目にターボにトラブルが発生して、ターボを使用せずにエンジンの動力だけでゆっくりとピットイン。結果は2台ともリタイアとなってしまった。
「ドライバーには、本当に申し訳ないことをした」と謝罪する新井総責任者。その一方で、激しいバトルを繰り広げるふたりの走りを見ていて、新井総責任者は「我々のパワーユニットを信頼して、プッシュしてくれたことに感謝している」と語るとともに「その信頼に早く応えられるようになるには、まだまだやるべきことは多い。限界までブッシュしていたのは『もっともっと長くプッシュしたい』」というドライバーからの無言のメッセージだったのかもしれません」と続けた。
最下位ながらチェッカーフラッグを受けたオーストラリアGPで、小さいけれど大きな一歩を踏み出したホンダ。このマレーシアGPでは2台そろってリタイアしたけれど、ライバルたちとのバトルを経験した。2週間以上の進歩を感じた、第2戦マレーシアGPだった。
(尾張正博)