2015年03月29日 11:31 弁護士ドットコム
職場結婚した夫婦が同時に「有給休暇」をとろうとしたら、上司にダメだと言われた――。こうした悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
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相談者の男性には、部署は異なるが、同じ組織で働く妻がいる。二人は「休暇ぐらい夫婦で過ごしたい」と考えて、有給休暇や休日勤務の代休を一緒に取りたいと考えている。ところが、そのことを上司に伝えると「他の人が忙しくなるから迷惑だ!」と断られたという。
男性は、他の人と休みがかぶらないよう、細心の注意を払って休暇の日を決めており、こうした職場の対応に疑問を感じている。「休暇は二人で過ごしたい」という夫婦の願いは叶わないのだろうか。労働問題にくわしい竹之内洋人弁護士に聞いた。
「有給休暇の使用については、労働者が会社に対して取得したい日を指定することで、原則として、その日は休む権利が発生します。
一方、その日に労働者が休むことで『事業の正常な運営を妨げる』場合、会社側は、別の日に休むよう指示することができます。これを『時季変更権』といいます。有休申請を断るというのは、時季変更権の行使と考えられます」
竹之内弁護士はこのように語る。
「もっとも、担当させる業務があるからこそ労働者を雇用しているのであって、労働者が休めば会社の業務に何らかの支障が出るのは当然です。
したがって、『事業の正常な運営を妨げる』というのは、それなりに高いレベルが必要です。他の労働者の応援などでは全くカバーしきれないくらいでないとなりません」
今回のケースのように「他の人が忙しくなるから迷惑だ!」という理由で有給申請を断ってもいいのだろうか。
「相談事例では、夫婦の部署が違うということですので、それぞれが休んだことによる穴は、各部署のメンバーが埋めることになるはずです。
そうすると、二人同時に休むから他の労働者でカバーしきれなくなるという事態は考えにくいです。『他の人が忙しくなって迷惑』という程度では、正常な事業運営の妨げとはいえません。
したがって、会社の時季変更権の行使は違法・無効となりますので、他に大きな事業運営の妨げになることがなければ、夫婦で希望した日に休む権利があると言えます」
竹之内弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
竹之内 洋人(たけのうち・ひろと)弁護士
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員
事務所名:公園通り法律事務所
事務所URL:http://www.pslaw.jp/