2015年03月29日 10:51 弁護士ドットコム
日本テレビ系の人気番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」を無断で動画投稿サイトに投稿したとして、京都府警八幡署は3月中旬、東京都小金井市在住の女性(46)を著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕した。
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発覚のきっかけは、八幡署が1月末に行った、ネット上の違法・有害情報を調査する「サイバーパトロール」だった。
報道によると、女性は今年1月、日本テレビで昨年末に放送された「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!! 大晦日年越しスペシャル 絶対に笑ってはいけない大脱獄24時!」を、自宅のパソコンから動画投稿サイト「FC2動画」に、無断で投稿した疑いがもたれている。動画は有料で配信されており、約3万回視聴されていた。
このニュースに対して、ネットの掲示板では「有料ではなく、無料で配信していれば違法じゃなかったのか」といった疑問も見られた。この女性はなぜ逮捕されたのか? また、無料配信であれば、問題なかったのだろうか? 著作権法にくわしい桑野雄一郎弁護士に聞いた。
「著作権の対象になるものを『著作物』といいますが、テレビ番組は『映画の著作物』に含まれます。また、番組内にも、音楽や建築、美術などさまざまな著作物が登場し、それぞれに著作権が成立しています。ですから、これを無断で動画投稿サイトに投稿すると、公衆送信権侵害となります」
テレビ番組だけでなく、音楽、映像、ゲームソフトなど、他人が作ったコンテンツを許可なくインターネット上に公開すれば、著作権法23条1項に定められた『公衆送信権』の侵害にあたるという。
今回は、閲覧数が多く、有料だったことも問題視されたのだろうか?
「公衆送信には『送信可能化』、つまりサーバーにアップロードする行為自体も含まれます。仮に視聴回数が0回だったとしても、動画投稿サイトに投稿した時点で、公衆送信権侵害となるのです。
また、配信が無料であっても有料であっても、公衆送信権侵害になるという結論は変わりません。なお、動画サイト等への投稿目的で『ガキ使』を録画することは、著作権法21条に定められる『複製権』の侵害となり、これも違法な行為です」
では、個人で見るために、テレビ番組を録画するのは問題ないのか?
「個人的に楽しむ目的での録画であれば、『私的使用目的』にあたりますから、録画する時点ではセーフです。
しかし、『FC2動画』など動画投稿サイトに投稿することは、私的使用ではありませんね。このように、私的使用目的で録画したものを、投稿という形で『目的外使用』をすると、公衆
送信権侵害に加えて、複製権侵害にもあたることになります。
なお、今回の女性の行為は、放送番組について、テレビ局が持っている放送事業者の権利(複製権・送信可能化権)の侵害にもなります。女性は刑事告訴だけではなく、テレビ局から損害賠償請求を起こされる可能性もあります」
公衆送信権や複製権など『著作権侵害』をした場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれら両方が、刑事罰として科せられる可能性がある。
最後に桑野弁護士は、このように警鐘を鳴らしていた。
「テレビ番組の録画・投稿は簡単にできる時代ですが、今回のようにいきなり逮捕されてもおかしくない明白な犯罪ですので、気を付けてください」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
桑野 雄一郎(くわの・ゆういちろう)弁護士
骨董通り法律事務所。島根大学法科大学院教授。「外国著作権法令集(46)-ロシア編―」(翻訳)、「出版・マンガビジネスの著作権」(以上CRIC)、「著作権侵害の罪の客観的構成要件」(島大法学第54巻第1・2号)等。
事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com