開幕戦に続き、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンがポールポジションを獲得しました。しかし前回と異なるのは、フェラーリのセバスチャン・ベッテルが2番手に食い込み、メルセデスAMGの牙城を崩したこと。フェラーリ復活の兆しを、またひとつ見せてくれた格好です。
予選Q3がウエットコンディションになったという要因があったとはいえ、ハミルトンとベッテルの差はわずかに0.074秒。開幕戦の予選では1秒以上の差があったことを考えると、両者の差は非常に接近したと言えそうです。では決勝でもベッテルは、メルセデスAMGに肉薄することができるのでしょうか?
今回のマレーシアGPは、速さに勝るメルセデスAMG対タイヤに優しいフェラーリという構図になっています。絶対的な速さではメルセデスAMGに軍配が上がるものの、フェラーリのマシンはタイヤへの優しさがピカイチで、長く良いペースを持続させることができます。両者が、それぞれの武器をどう活かすのかという部分が、レースの焦点となるでしょう。編集部の計算によれば、スタート直後のペースで、メルセデスAMGの方が0.6秒以上フェラーリよりも速ければ、メルセデスAMGが勝つ可能性が高いと出ています。ただ、逆にそれ以下の差であったならば、フェラーリにも2年ぶりの勝利の可能性があります。
ポールポジションからスタートするハミルトンに、最初ベッテルは徐々に引き離されていくはずです。しかし、ある時点を境に両者のペースは逆転し、今度はベッテルがハミルトンに近づいてくるでしょう。レースはおそらく2ストップになると思われますが、レース距離を均等に3等分してタイヤ交換を行った場合、スタート直後のペースが前述の0.6秒差以内であった場合、ベッテルの方が早くチェッカーを受ける計算になるのです。
とはいえ計算上はベッテルが速いと出ても、ハミルトンが有利なのは変わりません。ポールポジションからスタートするハミルトンは、先頭を走ることでペースをコントロールし、タイヤを労ることだってできるはず。さらには、ベッテルのアンダーカット(ライバルよりも先にピットインして新しいタイヤに交換し、新しいタイヤの性能を活かしてライバルよりも前に出ること)さえ封じておけば、ベッテルはコース上でのオーバーテイクを成功させる以外、ハミルトンに勝つことはできないからです。現在のF1において、オーバーテイクを成功させるのは至難の業。予選で記録された最高速の数値も4kmばかりベッテルが速いだけ。ハミルトンを抜くのは、容易ではありません。
ただ逆を言えば、ベッテルがスタートでハミルトンの前に出るようなことがあれば、ベッテルは格段に有利になってきます。もちろん、ベッテルは3番手スタートのニコ・ロズベルグを先行させないことにも最大限の注意を払わなければなりません。
メルセデスAMGが、その真の力をまだ大幅に隠し持っていたとしたならば、またも圧勝……ということになるでしょうが、おそらくその可能性は低いはず。ハミルトン、ベッテル、ロズベルグの三者による激しい争いを、56周に渡って目撃することができる、そんなマレーシアGPとなることでしょう。まずはそのスタートシーンにご注目ください。
予選4番手以下に沈んだマシンが、この争いに加わってくる可能性は、まず無いでしょう。各車とも上位3台に比べてペースが劣っている上、タイヤのデグラデーション(性能劣化によるラップタイムへの影響)が大きく、2ストップで走り切ることも困難だと思われるからです(フェラーリには劣るとはいえ、メルセデスAMGのマシンも、タイヤには優しい傾向にあり、他のライバルを圧倒しているのです)。レッドブルの2台は、フリー走行2回目での走行周回数が少なかったために判断が難しいところですが、トロロッソやウイリアムズのデグラデーションは特に大きく、早々にタイヤを交換する必要に迫られるでしょう。
そんな後方グループの中で面白いのが、予選8番手(2グリッド降格のペナルティで10番手スタート)につけたロータスのロマン・グロージャン。今年のロータスも、ペースこそ上位には劣るもののタイヤには優しく、トロロッソやウイリアムズよりも少ないタイヤ交換で、レースを走り切ることができそうです。レッドブルと戦えるかどうかはデータ不足のため分かりませんが、上位に浮上してくる可能性は十分あります。
さらに予選Q2で雨に祟られ、11番手に沈んでしまったフェラーリのキミ・ライコネンのマシンも、ベッテル同様タイヤに非常に優しく、しかも周囲と比較するとレースペースは非常に速いです。そのため、早い段階でレッドブルやウイリアムズ、トロロッソらを交わし、4番手あたりまで浮上してくるはずです。
その他、ザウバーやフォース・インディア、そしてマクラーレン・ホンダもデグラデーションは大きいはずで、結果2ストップが可能なのは、メルセデスAMG、フェラーリ、ロータスの3チームということになると思われます。
さて、ここまでの予測は、あくまでドライコンディションでレースが行われた場合。もし予選のような激しいスコールに見舞われたら、レースの結果がどうなるのか、予想は難しくなります。
セパン・インターナショナル・サーキットの3月29日(日)の天気予報を見てみると、14~17時は0.1mm、17時以降は1.4mmの降雨が予想されています。つまり、レースが終盤に近づくにつれ、降水確率が上がっているのです(ちなみに20時以降は2.0mmの降雨予想)。もし本当にレース中に雨が降るとしたら、そのタイミングがレースの結果を大きく左右することになるかもしれません。
最後に、マクラーレン・ホンダにも触れておきましょう。マクラーレン・ホンダの2台は、ジェンソン・バトンが17番手、フェルナンド・アロンソが18番手で、揃ってQ1脱落という結果でした。しかし、アロンソは「我々がQ1落ちするのは、そう長いことじゃないと思う」、バトンも「レースペースには期待を感じる」と語っています。たしかにフリー走行2回目では、マクラーレンの2台はフォース・インディアと同じようなペースでロングランを行っています。ここから見ても、開幕戦とは雲泥の差。新生マクラーレン・ホンダがその2戦目でどんな走りを披露するのか、そして今度こそライバルたちとバトルすることができるのか? 目が離せないところです。
(F1速報)