「昔々あるところに、一人の社畜が住んでいました」――。桃太郎や白雪姫など子ども向けの童話を、仕事漬けの会社員風にアレンジした「社畜童話」がツイッター上で流行っている。
「社畜」とは、会社に自分の全てをゆだねて家畜のような状態になってしまった会社員のこと。ツイッターでは3月24日ごろからハッシュタグ「#社畜童話」が登場し、多数のユーザーがオリジナルの童話を投稿している。
「きびだんご一つで頑張ってきたけどもう限界かも」
「ツルの恩返し」では、ツルがプログラマーとして夜遅くまで残業手当もなしにウェブサイトのコーディングをしている。長時間労働で精神を病む社畜を思い起こさせる内容だ。
「『進捗どうですか』とおじいさんが障子をあけて隙間から覗くと、ツルはストレスで自分の羽をむしっていました」
桃太郎も、社畜バージョンになると散々だ。
「桃太郎は犬、猿、雉をお供に鬼ヶ島に向かいました。人間は人件費が高いし、同じ種族で固めると労組を作られてしまうからです」
ブラック企業では、極力人件費を抑えようとする傾向があるが、桃太郎一行の場合も、きびだんご1つで危険な鬼退治に従事させる。別のユーザーからは、動物たちが、嘆く別バージョンの物語も投稿されていた。
「きびだんごって言う甘い言葉に誘われて頑張ってきたけど、もう限界かもしれん」
浦島太郎もかなり残念だ。竜宮城で時が経つのも忘れて残業し、家に帰ってみると知っている家族は誰もいない。「悲しくて泣き叫ぶ太郎の髪の毛は、玉手箱を開けるまでもなく、もう真っ白になっていました」という悲しいオチだ。
海外の童話の社畜バージョンもたくさんある。お城の舞踏会に参加していたシンデレラは「00 時にリリースするので会社に戻ります!!」と慌てる。サービス提供開始時間までに帰社しなければならないのだろうが、まさに社畜の鑑といえる。
「斧だって会社のものなんだよ」と詰め寄られる木こり
白雪姫も冷徹なコストカッターとなってしまう。「小人は7人も要らないわ。そうね2人で十分。経費が掛かるから1人は派遣でいいわよ」。メルヘンチックな雰囲気がぶち壊しだ。
イソップ寓話の「金の斧」では、木こりが池に斧を落としても美しい女神が出てくることはない。代わりに怖い上司が登場して「なんで落としたの?」と詰め寄ってくる。
上司「『すいません』じゃなくて、何故落としたかっていう理由を聞いているんだけど」
木こり「汗や力加減を考慮しておりませんでした」
上司「斧だって会社の物なんだよ?」
また「ウサギと亀」では、ウサギが亀に大差をつけるが、直前で上司に呼び止められ、追加の業務を言い渡されてしまう。
「デキるからと課された膨大な業務をこなす内、いつしか亀に追い抜かれ、亀は先に帰っていきましたとさ」
実際の会社でも仕事が速いはずなのに、業務が集中して労働時間が長くなることがある。ただ、亀の方が得かというとそれも違うようで、別のユーザーからは、仕事の遅い亀はプロジェクトスタート前に首になる、というバージョンも投稿されていた。
いずれも皮肉の効いたネタではあるが、一連の社畜童話に対しネットでは「笑った」という声のほか、「ところどころ現実だから笑えない」「身近にこういう人が多いので読んでいてハラハラしました」という声も出ていた。