2015年03月28日 11:21 弁護士ドットコム
スマートフォンのアプリを使って、近くにいる「一般ドライバー」の車で目的地まで運んでもらうーー。そんな新しいスタイルの配車サービスを展開する米国企業「ウーバーテクノロジーズ」が2月上旬、一般ドライバーによる送迎事業「ライドシェア」の検証実験を福岡市で始めたが、3月になって国交省から「待った」がかかった。この実験は、無許可でタクシー営業を行う「白タク」行為を禁じた道路運送法に違反する可能性があるというのだ。
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「ライドシェア」の利用自体は無料だが、ウーバー社からドライバーに対して、データ提供などに対する報酬が支払われる。国交省は「実質的に運送の対価になっているケースがある」として、無登録の有償旅客運送にあたる可能性が高いと判断したようだ。また、契約関係が複雑になることや、事故補償のトラブルが起こる可能性についても懸念を抱いているとされる。
国交省の指導を受けて、ウーバー社はいったん検証実験を終了すると発表。ドライバーへの支払いをガソリン代や通信費などの実費支払いに改めて、再開に向けた検討をしているという。米国で注目サービスとなっている「ライドシェア」だが、なぜ日本では「違法」と判断されてしまうのか。石原一樹弁護士に聞いた。
「結論として、ライドシェアが法的に認められるには、かなりハードルが高いと思います」
石原弁護士はこう切り出した。どうして、そのようにいえるのだろうか。
「まず、一般の人が自家用車を使って他人を有償で乗せる、いわゆる白タク行為も『旅客自動車運送事業』にあたります。そのため、道路運送法78条にあげられている次のような例外事由に該当しない限り、認められません。
(1)災害のため緊急を要する場合
(2)市町村や特定非営利活動法人等が登録をした場合
(3)国土交通大臣の許可がある場合
ドライバーが受け取る対価がまったく『無償』であれば、旅客自動車運送事業に該当せず、実施できるでしょう。しかし、ガソリン代や通信費等の『実費』であっても、ドライバーが金銭を受け取る仕組みである以上、実質的な対価とみなされ、有償と判断される可能性が高いからです」
では、ライドシェアの導入のために法改正すべきだろうか。
「現行法で白タク行為が規制されているのは、運送事業の発展と国民の安全のバランスをとるためです。不合理であるとまではいえず、法改正の必要性はあまりないと考えます。
厳しい基準で交付される二種免許を持たない運転手が、利益を出すために安全を無視した運転をするリスクがあります。また、道路運送法の問題ではありませんが、自動車保険の適用の可否も問題となります。
仮に法改正がされるとしても、『自家用車に他人を有償で乗せる行為』の例外事由が拡大する方向ではなく、ウーバー社自身が道路運送業の許可を取得することでサービス展開が可能になるように法律を解釈したり、許可基準を運用するという方向にとどまるかもしれません」
ウーバー社は、すでにタクシーの配車アプリを提供するサービスを展開している。今後、どのような取り組みをするべきだろうか。
「やはり既存のタクシー事業者と協力して展開するほうがスムーズに進むのは間違いないでしょう。
ライドシェアに関しては、一概に理不尽な規制や指導とは思えないので、やむを得ないと思います。
単に便利さを追求するよりも、安心・安全といった観点からイノベーションを起こすほうが法規制の流れが変わりやすいと思います」
石原弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
石原 一樹(いしはら・かずき)弁護士
2012年に弁護士登録後、ヤフー株式会社に入社し、企業内弁護士としてインターネットに関する法務業務に従事。2015年からホーガン・ロヴェルズ法律事務所外国法共同事業に入所。日本国内外を問わず積極的にスタートアップ企業やベンチャー企業へのリーガルサービスも提供している。
事務所名:ホーガン・ロヴェルズ法律事務所外国法共同事業
事務所URL:http://www.hoganlovells.com/ja/