WEC世界耐久選手権のLMP1クラスに参戦しているトヨタは26日、フランスのポールリカール・サーキットで2015年仕様のトヨタTS040ハイブリッドを発表した。その現場で、木下美明TMG社長に小林可夢偉のテスト&リザーブドライバー起用の経緯や、自身の異動についての思いなどを聞いた。
今年は国内トップフォーミュラのスーパーフォーミュラに参戦することが決まっている可夢偉は、1月末にスペインでTS040ハイブリッドのテストに参加したことが明らかになっている。木下社長によると、候補者たちが参加した1月末のテストで可夢偉が一番速かったため、今回の起用が決まったのだという。
「可夢偉だから選んだのではなくて、テストをした中で一番良かったから順当に選ばれただけですね」と木下社長。とは言え、TMGとしては以前から可夢偉にアプローチをしていたのだと明かした。
「僕たちは去年もその前も、ずっと入ってこないかというアプローチはしていました。僕たちのドアはいつも開けていたのですが、可夢偉にはF1に乗りたいという思いがあるので、みんなで見守っていたんです」
その後、可夢偉がトヨタ復帰を決断し、「じゃあ1月のテストを走ってみるかとなって、走ったらやっぱり一番速かったですね」。現在のところ、可夢偉がTS040ハイブリッドをドライブしたのはその1回のみ。今後TMGが予定しているテストへの可夢偉の参加も、スーパーフォーミュラのプログラムとのバッティングなどから未定となっているが、「なるべく多く乗ってもらいたいとは思います」と木下社長。またル・マンにも「何が起きるかわからないので来てもらう」ということだ。
一方、その木下社長は4月1日付けで人事異動。4月のWEC開幕戦シルバーストンを終えた後に日本に帰国し、トヨタ自動車で新しいポストに就くことが発表されている。後任には、佐藤俊男氏が就くことになっている。
ちなみに、木下社長と佐藤氏はTS010でル・マンに挑戦した頃からの仲。その後、アメリカのCARTにもともに挑戦しており、今回も慌ただしい中でのバトンタッチとなるが「引き継げなくてもあとで電話すればいいよ、っていう間柄ですね」と木下社長。TMGでのプロジェクトへの思い入れについては次のように語る。
「このプロジェクト最初から立ち上げてきましたし、F1が終わった後、結局ドイツにも10年間駐留していて、もちろん自分が継続したいという思いは強いです」。とは言え、様々な状況を鑑みて、社長交代の時期であるとも感じていたのだという。
「仕事として考えると、WRC(世界ラリー選手権)が決まってこれでTMGが結構安定していけるなと、あと自分の年齢も考えると社長を交代するなら今がいいなと、去年の夏くらいから考えていました」
その後、今年1月末に急きょ異動が決定し、木下社長は国内で新たなポストに就くことに。今回はその新たなポストについての詳細は明かされなかったが、木下社長の今後の活躍、そして佐藤氏の率いる新たなTMGの活躍にも引き続き注目していきたいところだ。