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<一票の格差>東京は「合憲」大阪と名古屋は「違憲状態」なぜ高裁の判断が違うのか?

2015年03月25日 20:01  弁護士ドットコム

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一票の格差が最大2.13倍だった昨年12月の衆院選は「憲法違反で無効だ」と、2つの弁護士グループが訴えている裁判で、全国の高裁やその支部で判決があいついでいる。


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全国に先駆けた3月19日の東京高裁の判決では「選挙制度は合憲で、選挙は有効」とする判決が下された。しかし、その後は、20日の名古屋高裁、23日の大阪高裁、24日の広島高裁、仙台高裁秋田支部で「違憲状態」だとする判決が出た。これは、選挙は無効ではないが、「一票の格差」は憲法の求める平等原則に反する状態にある、という判決だ。



さらに25日の4つの判決も、結論はバラバラだった。高松高裁は合憲判決、広島高裁松江支部と名古屋高裁金沢支部が「違憲状態」判決、福岡高裁は一連の裁判で初の「違憲」判決をくだした。



同じ選挙の有効無効を争う裁判なのに、判断が分かれるのはどうしてだろう。混乱は起きないのだろうか。憲法問題にくわしい作花知志弁護士に聞いた。



●「投票価値」の問題は、「評価」の問題


「裁判所の判断が分かれる理由としては、もともと一票の格差の問題は、『評価』の側面が強い問題だということがあげられるでしょう」



作花弁護士はこう切り出した。「評価」とはどういうことだろう。



「選挙権について、『ある人は2票持っているのに、別な人は1票しか持っていない』ということがあれば、憲法の定める法の下の平等(憲法14条)や選挙人の資格の平等(憲法44条)を保障する各条項に違反することは明らかです」



たしかに、1人が投票できる「票数」または「回数」が、人によって単純に違っているとすれば、誰もが不平等だと考えるだろう。



「これに対して、『一票の格差』の問題は、『票の数』は一人一票と平等だけど、選挙区ごとの人口差によって、その『一票の価値』に不平等が生じているとされる問題です。



そこには、『人口比例との関係で、どの程度の価値の差が生じていれば、憲法に違反するか』という『評価』の問題が生じます」



このように述べたうえで、作花弁護士は、もうひとつ別の観点もあると指摘する。



「これは、選挙権を行使して投票した『一票の価値』に不平等が生じているのにも関わらず、国会議員がルールを変えない(立法不作為といいます)という問題でもあります。



つまり、『どんな場合に国会議員による立法不作為は違法となるのか』という評価の問題も、同時に生じるわけです。



このように『評価』の側面が強い法律問題であるからこそ、各裁判所によってその評価が異なる事態が生じる、ということになるのです」



現状でも、合憲・違憲・違憲状態と判断が分かれているわけだが、バラバラのままで良いのだろうか?



「法律制度としては、最終的に『最高裁判所が統一的な解釈を行う』ことになります」



つまり、最終的な決着は「最高裁」で決まるわけだ。



●選挙権は「民主政のプロセス」を支える権利


一連の訴訟を、作花弁護士はどう見ているだろうか?



「『一人一票の平等』と同じように、『一票の価値の平等』も、とても重要な権利だと思います。



選挙権は『民主政のプロセス』を支える重要な権利です。一票の価値の平等が保障されていなければ、国会に『国民の意思』が適切に反映されていないことになります。



裁判所としては、ぜひ積極的な判断をしていただいて、『民主政のプロセス』に問題がある状態を是正してほしいと考えています」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、日本航空宇宙学会、国際人権法学会などに所属
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/