坂茂のデザインによる『REVERBERATION─Pavilion of Light and Sound』が、5月8日と9日にイタリア・ヴェネチアのPalazzo Pisani Conservatorio di Musica Benedetto Marcelloに展示される。
フランスのポンピドゥー・センター・メスといった世界各地の文化施設、住宅を手掛けているほか、阪神淡路大震災や四川大地震の被災地域に建設された仮設住宅や仮設校舎、2011年の大地震で被害を受けたニュージーランド・クライストチャーチの仮設教会など、紙を資材に用いた建築を通して世界の被災地で支援を行っている坂茂。昨年には「建築界のノーベル賞」とも言われるアメリカの建築賞『プリツカー賞』を受賞している。
『REVERBERATION─Pavilion of Light and Sound』は、資生堂のブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」とのコラボレーションにより実現。同ブランドの2015年秋冬コレクションのテーマ「ベニスの光」にインスピレーションを受け、メイクパレットのパーツ約9万個を素材に用いたパビリオンを、会場である1603年建設の音楽学院Palazzo Pisaniのコートヤードに建設する。パビリオン内では音楽が演奏され、音と光の反射を体験できる空間になるとのこと。
なお、今回のプロジェクトは『第56回ヴェネチア・ビエンナーレ』の内覧会期間であるヴェルニサージュの開催にあわせて実施される。
■坂茂のコメント
最小限の材料と力で空間を包み込むには、テンシル構造が適切である。この歴史的なファサードに囲まれた狭いPalazzo Pisaniに空間を切り取るため、アクリル板をそのファサードに立て掛けて、自然に吊り下げられた放物線状の面を作った。
初めてクレ・ド・ポー ボーテのパレットを見た時、この濃紺の表面が光を反射したり吸収するタイルに見えた。そこでこのパレットを9mmの間隔でアクリル板の両面にタイル状に貼り、光を反射させたり、内部に翳を作り、その隙間から構造体を固定する重しとしての水面に反射するベニスらしい揺らぐ光を内部に取り込んだ。
今は音楽院になっているこのPalazzo Pisaniのコートヤードに立った時、どこからともなく音が聞こえてきた。その音は音楽というより、この空間独特の環境を作る構成要素である。 神秘的な光と翳と調和する音の空間。それは歴史的なファサードに重ねた化粧ではなく、既存のコンテクストの魅力を引き出す仕掛けである。