就活生向け情報を掲載する「東洋経済HRオンライン」編集長の田宮寛之氏が、昨年批判が殺到したリクナビの「エントリー煽り」を擁護し、ネット上で話題を呼んでいる。
3月19日付けの記事タイトルは、「『就職サイト』を笑う者は、就活に泣く 君は就職サイトなしで就職できるのか?」というもの。何かと批判の多いリクナビとの付き合い方を提案している。
情報整理できないのは「就職サイトではなく学生の責任」
リクナビは昨年春、2015年卒向けのページで「あなたのエントリー件数53社 内定獲得した先輩のエントリー件数78社」などと表示した。これが企業へのエントリーを増やして自社の利益を図るために、就活生の不安を過度に煽ったと大批判を受けた。
これを受けてリクナビ担当執行役員の中道康彰氏は、就活が一段落した昨年11月に「結果的に不快な思いをした学生さんたちには申し訳なかったと率直に反省している」と、『東洋経済』誌面で遺憾の意を表明している。
しかし田宮氏は「そもそも多少はあおられないと企業研究を始めない学生が多い」と擁護の姿勢を表明。リクナビに薦められた企業にプレエントリーすることで、学生の就活がスムースに進むケースが多いと指摘する。逆に「情報過多で学生が混乱する」という批判に対して、こう反論している。
「情報を整理できないのは就職サイトの責任ではなく、学生の責任ではないのか」
リクナビへの批判で最も多いのが、多数の企業にワンクリックでまとめてエントリーできる「一括エントリー機能」だ。安易に大量エントリーできるため「十分な企業研究ができない」「選考に受かっても企業理解が不十分なので早期退職してしまう」という指摘もある。これについても田宮氏は、
「就活生が企業研究するのは当たり前のこと。多すぎて研究しきれないならば、何かしらの基準で企業数を自分で絞ればいい」
と断じている。「そもそも、多くの企業にエントリーしておかなければ、選考に落ちたときに次に受ける会社がなくなってしまう」ので、「ある程度多くの会社にエントリーしておくのは重要」だとする姿勢を譲らない。
東洋経済関係者の「ポジショントーク」?
「ある程度多くの会社にエントリー」と「何かしらの基準で企業数を自分で絞れば」の間には、矛盾を感じる人もいるかもしれない。わざわざ「エントリー煽り批判」に反論する必要もないように思えるが……。
加えて田宮氏はリクナビが「自社の収益のためにエントリーをあおっている」という批判に対して、「民間企業であるリクルートが収益を追求するのは当たり前のこと」と反論する。
その上で、リクナビに掲載されている情報はあくまでも求人広告記事だということを理解し、それを基にOBやOG訪問をするなどして自分で企業研究を深めればいいとしている。
「リクナビに全面依存するから問題が生じる。就活の主体はあくまでも学生自身だ。リクナビは就活ツールの1つだと割り切って使えば、これほど便利で役に立つものはない」
田宮氏は3月20日に個人名のツイッターで、「『リクナビなんて必要ない』と言う学生がいるが、その学生がいくつの企業を知っているのか」とも投稿していた。
確かに学生が企業名を知らないのは当然だ。しかし社会人なら、リクナビに莫大な求人広告費用をかける会社以外にも、就職先の選択肢はあるというアドバイスも可能なはず。それをしないのは、「大手上場企業の情報を載せる東洋経済関係者のポジショントーク」と揶揄する声もある。
「リクルートスーツは黒系を選べ」で話題に
この記事はネットでも話題になっており、ツイッターには「どんなツールもうまく使いこなすのが重要」と同意する声のほか、「別にリクナビを使わず成功したという気はないが、商業ベースのシステムに乗せられる抵抗感が先に来る」という見方も寄せられていた。
なお田宮氏は昨年秋、「リクルートスーツは黒系を選べ」と題する記事を書き、就活生や社会人から「ストライプの何が悪い」「就活は葬式か」などと批判を受けたこともあった。