2015年03月21日 10:21 弁護士ドットコム
「風俗で副業していたことを同僚にバラされた。もう会社に行けない!」。こんな悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
【関連記事:「同級生10人から性器を直接触られた」 性的マイノリティが受けた「暴力」の実態】
相談者は副業禁止の会社で働いているが、実は一時期、こっそり風俗店で副業をしていたことがあるそうだ。ところが最近になって、会社の同僚が、少なくとも3人の社員にそのことをバラしていたことがわかった。
その同僚に問いただしたところ、「誰に話したかを白状し、何度も謝られた」という。しかし相談者の怒りと不安はおさまらず、「風俗で働いていたなんて社内の人間に知られるのはたまりません」「会社に行くのが怖い」と心情を吐露している。
相談者は「出来るだけ早い段階で会社を辞めようと考えている」そうだが、同僚の軽はずみな行動で窮地に追い込まれたため、「名誉毀損で訴えられないか?」と質問している。はたして、こんなケースでも名誉毀損は成立するのだろうか。秋山亘弁護士に聞いた。
「名誉毀損は、人の社会的評価を低下させる事実を『不特定多数の人』に公表した場合に成立します」
秋山弁護士はこのように切り出した。今回の事例では「少なくとも3人の社員」に風俗の副業をバラされたということだが、名誉毀損は成立するのか?
「2~3人に話したというだけでも、その2~3人から他の人に伝わる可能性がある場合には、『不特定多数の人』に公表したことと同一視されます。
ただし、公表した事実が、
(1)公共の利害に関する事実であること
(2)公益目的によるものであること
(3)真実であること、もしくは真実と信じたことに相当の理由があること
という要件をいずれも満たしている場合には、違法性がないと判断されるか、故意・過失がないと判断され、不法行為は成立しません」
相談者が風俗で副業をしていたこと自体は「真実」のようだが・・・。
「そうですね。今回のケースでは、公表した事実は真実ですので(3)の要件は満たしていると言えます。一方、(1)と(2)の要件は、満たしていないものと考えられます。
ただ、相談者の会社では、副業が禁止されているようです。もし同僚が『禁止された副業をしている社員がいる』ということを知らせるために、会社の上司にだけ報告したのであれば、社員として会社への忠実義務を果たしたという側面があります。
ですから、(1)と(2)の要件も満たしていると、考えることができるかもしれません」
では、名誉毀損は成立しないのだろうか?
「今回のケースでは、会社の上司ではなく、ほかの同僚に話したという点が問題です。会社の同僚に対して、単なる世間話や雑談として、他人の名誉を損ねる話をしたのであれば、(1)(2)の要件は満たさないと判断される可能性が十分にあると言えます。そうなると、名誉毀損にあたる可能性があります」
秋山弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
秋山 亘(あきやま・とおる)弁護士
民事事件全般(企業法務、不動産事件、労働問題、各種損害賠償請求事件等)及び刑事事件を中心に業務を行っている。日弁連人権擁護委員会第5部会(精神的自由)委員、日弁連報道と人権に関する調査・研究特別部会員
事務所名:三羽総合法律事務所