上司にムカついた経験は誰でも一度や二度はあるはずだ。大抵はグッとこらえて終わり。何かあっても口論が良いところだろう。ましてや、手を挙げるなんて――。
昨年10月、自衛隊内で50代の男性准陸尉が男性上司を暴行、左脇腹に約2週間のケガを負わせる事件があった。報道によると准陸尉は、上司が遅刻したと勘違いし、反省した様子がなかったために蹴りを浴びせたのだという。
准陸尉は3月2日に停職20日の懲戒処分を受けており、ニュースを見たネット民からは「上司に制裁したのかよ。すげえな」など、さまざまな感想があがっている。
防衛大を卒業するとすぐに部下ができる自衛隊
上下関係が厳しそうな自衛隊だけに、「何で上司が部下にやられてるの?」という疑問もあるが、多くのユーザーは「上司が年下」と推測することで納得しているようだ。
「50代の准尉から見たら、防大出たばっかの三尉なんてガキそのもので上官とは思えないわな」
「准尉」は一般的には、下士官出身者では最上位の階級。一方、士官で一番下の「三尉」は防衛大学卒業後約1年で任命される階級だ。現場一筋の50代ベテランが20代若手上司を「教育」したと考えれば、いかにもありそうな話だ。
「大卒で本社採用の新人が、研修で工場勤務した際に工場長にどやされるのと同じ」
と、民間企業に例えると分かりやすい。階級こそ上だが、若手士官は現場のベテランに教えてもらうことの方が多いそうで、「業務上は命令を下し、飲み会の場で制服を脱いだらペコペコお酌」というのが一般的なのだとか。なんともややこしい上下関係だけに、
「公務員の学歴至上主義ってこういうのが面倒だよな。自分より経験のある、年配の部下とかやりづらくてしょうがない」
「50代叩き上げが新米より階級下になるような事やってるから、わけのわからんことになる」
という意見には思わず頷いてしまう。
「勘違い」でなかったら明るみにならなかった?
今回は処分を受けてしまった准陸尉だが、暴行したことについてはそれなりの理由があった可能性もあるのでは、と憶測を拡げる人たちも少なくない。
「普段からの勤務態度、性格、仕事の要領などに筋が通っていれば、いきなり部下に殴られることはない」
「若い人間に睨み利かせるくらいの叩き上げがいないと、現場の雰囲気が持たないってのも事実なんだよな」
自分が上司に強く言えない分、胸のすく思いをした人も多かったのかも知れない。しかし、そうなると気の毒なのが、負傷した上司の方だ。コメントの中には「難しい世界だよな。士官教育終えれば、いきなり何十年勤めた人間より上の階級で配属されるんだから」と同情する声も見られた。
現役自衛官を自称するあるネットユーザーは20代のころ、当直の交代に遅刻して40代の部下に「鉄拳制裁」を食らった。しかし、自身に遅刻という非があったことに加え、部下の方が有益な人材だったという理由で、報告は思い留まった。
「自衛隊は特に顕著だろうけど、職場や学校でのイジメや行き過ぎた指導とかは、やられた方も悪いってことで、こうやって闇に埋もれてくんだろうなって思った」
自衛隊という組織の性質上、厳しい規律とともに「体罰」をなくすことも難しいのかもしれないが、ケガをして働けなくなってしまっては本末転倒。国だけではなく、組織内の平和維持にも努めてもらいたいものだ。
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