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フォーミュラEマイアミ決勝:接近戦を制しプロスト優勝

2015年03月15日 08:50  AUTOSPORT web

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マイアミePrixでフォーミュラE初優勝を果たしたニコラス・プロスト
フォーミュラEの第5戦マイアミePrixがアメリカ・マイアミの市街地コースで行われ、アラン・プロストの息子であるニコラス・プロスト(e.ダムス・ルノー)がフォーミュラE初優勝を果たした。2位にはこのレースがフォーミュラE初参戦となるスコット・スピード(アンドレッティ)、アウディ・アプトのダニエル・アプトも3位に入り念願の初表彰台を手にした。

 アメリカに初上陸したフォーミュラE。マイアミePrixのコースは、バスケットボールNBAのマイアミ・ヒートが本拠地とするアメリカン・エアラインズ・アリーナの周りを周回する、1周2.169kmの市街地コース。コーナーが8つしかないシンプルなレイアウトながら、高速道路の下を通過したり、路面がバンピーだったり、コース幅が狭かったりと、非常に難易度の高そうなコースである。

 現地時間の12時過ぎから行われた予選は、通常どおり10分×4グループで行われる予定だった。しかし、コースの準備が遅れたためにフリー走行の実施時間が遅れ、その煽りを受ける形で各グループとも8分に短縮して行われた。

 この予選でポールポジションを獲得したのは、第3グループに出走したジャン-エリック・ベルニュ(アンドレッティ)。ベルニュはただひとり1分6秒を切る1分5.953秒を記録している。ベルニュはこれで、参戦3戦目ながら2回目のポールポジション。昨シーズンまでF1を走らせていた才能をいかんなく発揮している。2番手にはチャイナ・レーシングのネルソン・ピケJr.、3番手にはプロストがつける。プロストは予選第1グループでの出走で、「後半の方がコンディションが良かった」と悔しがる。

 なお、予選10位のニック・ハイドフェルド(ベンチュリ)と16位のカルン・チャンドックは、レギュレーションの規定を超えたパワーを使っていたことが発覚し、予選タイム抹消のペナルティがくだされている。さらに2番手のピケJr.も、前戦ブエノスアイレスePrixでのイエローフラッグ無視のペナルティで5グリッド降格。プロストがフロントロウからのスタートを手にした。

 このレースがフォーミュラE初参戦となる、昨年までスーパーGTなど日本で活躍していたビタントニオ・リウッツィは予選11位。同じく今回が初参戦、フォーミュラ・ニッポンとスーパーGTのチャンピオンで、2013年のル・マン24時間にも優勝しているロイック・デュバルは予選18番手となっている。

 予定時刻より5分ほど遅れて、決勝レースがスタート。ポールポジションからスタートしたベルニュは、マシンを右に振ってプロストを牽制。ポジションをキープする。コース幅は非常に狭いが、全てのマシンがグリッドの隊列どおり2列のまま1コーナーに進入。各所で小さな接触はあったようだが大きな事故には至らず、レースは進んでいく。1周目にして3番手スタートのサム・バード(ヴァージン)がプロストをオーバーテイクして2番手に。後方では開幕戦以来の出走となるシャルル・ピック(チャイナ)がスピンし、大きく遅れていく。

 3周目にはアムリン・アグリのサルバドール・デュランが、今回初参戦のスコット・スピード(アンドレッティ)を攻めるも抜けず、逆にリウッツィにオーバーテイクされてしまう。ベルニュ対バードの先頭争いも実に熾烈だ。

 7周目頃には全車がバッテリーを64~67%残した状態。僅差での戦いが続いていく。ここでデュバルがファステスト。ようやくフォーミュラEマシンに馴れてきたようだ。

 これまでのレースとは異なり、セーフティカーも出ないままレースは中盤に。14周目になっても先頭のベルニュから9番手のスピードまでが数珠つなぎ状態。一方スピードと10番手デュランの差は7秒と広がっていき、デュランの後方は渋滞が出来上がっている。するとe.ダムス・ルノーのセバスチャン・ブエミがたまらずデュランを交わす。ペースの上がらないデュランは、その後ブルーノ・セナ(マヒンドラ)らにも抜かれ、徐々に順位を下げていく。

 18周目、レースが間もなく中間地点を迎えるという段階で、各車のバッテリー残量は10%前後になっている。先頭のベルニュは9%、2番手のバードは12%。ここからレースは動き出していく。

 19周目、バッテリー残量が厳しいベルニュはペースダウンを強いられ、この隙にバードがオーバーテイクを成功させてトップに。ステファン・サラザン(ベンチュリ)もアプトを交わして4番手に上がる。そしてこの周回終了時点で2番手のベルニュ、アプト、サラザン、ディ・グラッシらがピットイン。マシンを乗り換える。バードは20周目に入って行くが、バッテリー残量は厳しい。バードのステイアウト作戦の選択は失敗で、案の定途中で大きくペースダウンすることを強いられる。これで先頭に躍り出たのはプロストだ。

 19周目にピットインしたドライバーのうち、それまで4番手につけていたサラザンは、なかなかコースに復帰することができない。ライバルの倍近い時間をかけてコースに出て行ったものの、彼のマシンにはギヤボックスのトラブルが出ており、結局リタイアすることになる。

 20周目にはプロスト、スピード、バード(バードは結局3番手まで順位を下げてしまった)らがピットインし、ピケJr.が先頭に。そのピケJr.も翌周にピットに入ったことで、最初のスティントを極端に伸ばしたハイドフェルドがトップに立つ。そのトップ周回も1周限りで、22周目にピットに入る。

 全車がピットイン、マシンを交換したところで先頭に立ったのは、アプトだ。アプトはプロスト、ディ・グラッシ、ベルニュ、スピード、ジェローム・ダンブロジオ(ドラゴン)らを従えて、優勝に向けひた走る。気がつけばアウディ・アプトのマシンが1-3番手である。

 4番手のベルニュのペースは上がらず、先頭の3台とそれ以降のマシンの間に、徐々にギャップができていく。上位3人はほぼ等間隔。24周目にはスピードがベルニュを交わしてトップ3台を追う。ベルニュを抜いた後のスピードのペースは素晴らしく、次第に上位3台に近付く。しかもエネルギーの消費も少なく、上位4台の中ではもっとも有利な状態だ。29周目にはダンブロジオもベルニュをオーバーテイクする。その後方ではピケJr.が元気よく、バードを交わし、32周目にはベルニュも交わして上位に迫っていく。

 34周目、トップ3に追いついたスピードがディ・グラッシをオーバーテイクし、3番手に。この頃のバッテリー残量は、先頭のアプトが22%、プロスト27%、スピード29%と、ペースを上げて追い上げてきたにもかかわらずスピードが相変わらず一番有利な状況。逃げるアプトは防戦一方だ。ディ・グラッシもついていくことはできず、優勝争いは残り3周というところで3台に絞られた。

 残り2周となった38周目、プロストがアプトをかわして遂に先頭に。スピードも続いてアプトを抜いて、先頭争いは一騎打ちに。抜かれたアプトには、ディ・グラッシを攻略して追い上げてきたダンブロジオも迫る。

 急遽参戦が決まったスピードのヘルメットは、まったくペイントがなされていない真っ白なもの。その白いヘルメットが、e.ダムス・ルノーの青いマシンを追う。プロストはフランス語でチームに無線を飛ばすが、明らかに余裕がなくなっているのが感じられる。しかしプロストはなんとかスピードの攻撃を封じ、そのままトップでフィニッシュ。2位はスピードだが、その差は僅か0.4秒であった。

 プロストはこれでフォーミュラE初優勝。連続表彰台で、通算の獲得ポイントを67とし、ディ・グラッシを抜いてランキングトップに立った。「アメリカで最初のレースで勝てて嬉しい。家族の前で勝ててよかったよ」とプロスト。表彰台には父のアラン・プロストと共に登壇した。

 初参戦ながら2位を得たスピードも「素晴らしいクルマで、素晴らしいレースだよ。本当にたくさんの経験ができたね。プロストとは同じ戦略だったから、勝てなかったよ」と語った。

 3位はアプトがなんとか守り切り、自身初の表彰台。4位にはダンブロジオ、5位にはペナルティを受けながら追い上げたピケJr.が入った。予選までは苦戦していた前戦勝者のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(アムリン・アグリ)が気がつけば6位に、デュバルも7位に入ってレース巧者ぶりを見せつけた。デュランも10位に入り、アムリン・アグリはダブル入賞を果たした。ファステストラップは、29周目に1分7.969秒を記録した、ピケJr.が記録している。ちなみに今回のレースでは、セーフティカーの出番はなかった。

 次のフォーミュラEのレースは、ふたたびアメリカ。インディカーなどでもお馴染みのロングビーチで4月4日に行われる。