2月2日付のBBCニュースで、廃棄物から消費者向けの製品を作り出す「テラサイクル社」を紹介していました。リサイクルしにくいタバコの吸い殻やビスケットの包装紙、化粧品のケースなどを集めて、再利用する方法を見つけるビジネスです。
マクビティやジョンソン&ジョンソン、ケンコなど有名企業の事業所から排出された廃棄物や、消費者が慈善団体への寄付と引き換えに持ち込んだゴミを回収し、材料になるまで処理して製造業者に売り、バッグやベンチ、ゴミ箱などの製品に作り替えます。(文:夢野響子)
スナックの包装紙やタバコの吸い殻から「製品」作る
回収されたタバコの吸い殻は、フィルター部分がプラスチック製の貨物用パレットに生まれ変わり、葉と紙の部分は堆肥に。口紅やマスカラのケースは形を変えて、公園のプラスチック製滑り台などになります。
創設者で最高経営責任者のトム・サーケイ氏(33)は、ぼさぼさ髪にジーンズ、トレーナー姿。典型的な新世代の起業家ですが、生まれは共産時代のハンガリー。4歳で両親とオランダへ、10歳でカナダへ移住しました。
彼のビジネスモデルは、資本主義と共産主義という2つの異なった経済システムから生まれたものだとか。ハンガリーではテレビを買うために許可が必要で、直接店に行って買うことはできません。許可取得から1年ぐらいして、ようやく白黒の国営放送1局しか入らないテレビが手に入りました。
しかし移住先のカナダでは、週末に父親とドライブすると、まだ使えるカラーテレビがゴミ収集場に山のように捨てられています。このとき彼は「無駄をなくしたい」というコンセプトを思いつきます。
19歳でプリンストン大学を中退して起業。最初の製品は、うじ虫の糞から作った有機肥料でした。5年以内に売り上げは300万から400万ドル(約3億6千万円から4億8千万円)になったものの、損失も出ていました。アプローチが間違っていたのです。
「僕たちは最初に製品のアイディアを見つけて、それに合ったゴミを探していた。5年間事業をしていて、そういうやり方になっていたんだ。(でも儲からなかったので)それですでにあるゴミから考え始めようということになった。スナックの包装紙やタバコの吸い殻をどうすればいいか、というところからね」
「社会に役立つことで利益を上げて、自分も儲けたい」
リサイクルしにくいゴミを製品化することは効率がいいとはいえません。例えばタバコの吸い殻からプラスチックの灰皿1個を作るためには1000本から2000本、公園のベンチ1つを作るためには20万本以上が必要です。
しかし、リサイクルしにくい廃棄物に着目する考え方の転換がなかったら、テラサイクルは現在のような利益を上げていなかったでしょう。
彼は社会への貢献を重視していますが、その一方で利益の信奉者でもあります。13年前に地下室から始めた彼のビジネスは、今では世界21か国に展開。115人の従業員をもち、昨年の収益は20万ドル(約24億2千万円)でした。
「若い起業家は、世の中のためになることをして利益を上げないか、何か悪いことをしないと利益は上がらないと信じています。でも、私はそのどちらも信じない。役立つことをして利益を上げたい」
そして彼自身は、「人間が個人的なリターンに動機づけられるもの」ということを認めています。
「もし私がこの会社を売ったら、何百万ドルも作ることができる。それが人間の動機というものです」
ともあれ、世の中に役立って、収益も上げられたら最高ですね。
(参照)Waste not, want not - making money from rubbish (BBC)
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