2015年03月12日 10:51 弁護士ドットコム
映画や音楽などの著作権侵害について、現在の日本の法律では、権利者の「告訴」がなければ検察が起訴できない「親告罪」とされている。しかし、環太平洋連携協定(TPP)の交渉で、これを「非親告罪」に変更する方向の調整が進められていると、NHKが2月に報じた。
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表現の自由の擁護を目指すNPO「うぐいすリボン」は3月9日、東京・永田町の衆議院第2議員会館で、「TPPと著作権の非親告罪化について考える」と題した勉強会を開き、国際日本文化研究センターの山田奨治教授が「非親告罪化」の問題点と対策を語った。
山田教授はNHKの報道について「信用できる情報だ」と語った。その理由として、(1)告発サイト「ウィキリークス」に掲載された文書の中に該当する記述があること、(2)各国の政府がリークされた文書を否定していないこと、をあげた。
つまり、TPP交渉で、日本を含む各国が「著作権侵害の非親告罪化」に向けて調整しており、実現する可能性があるという。山田教授は非親告罪化の懸念について、次のような例をあげて説明した。
「パン屋さんで、『アンパンマン』のキャラクターに似せたパンを売っていたとする。非親告罪になると、たとえば、別のパン屋さんが『あそこの店でアンパンマンに似たパンを無断で売っている』と通報しただけで、警察がやってきて店主が逮捕される、といったことが起きるかもしれない」
現行の著作権法は、権利者の告訴が必要な「親告罪」であるため、問題は生じていなかったが、「非親告罪」になると、権利者の意思にかかわらず、検察が起訴できるようになる。
山田教授は「パン屋の例でいえば、軽微な侵害なので、これまで権利者は告訴しなかった。告訴があまり期待できないので、警察や検察は動かず、発見者もわざわざ通報しなかった」と語り、非親告罪化によって、行政の力が強くなりすぎることへの懸念を表明した。
著作権侵害の非親告罪化については、パロディ同人誌が作りにくくなる可能性があるなど、文化やビジネスに悪影響を及ぼすおそれがあるとして、反対運動が起きている。
山田教授は「結局、著作権侵害されているかどうかは、権利者にしか判断できない」と指摘。もし非親告罪化が避けられないとしても、その弊害を小さくするために「すべてを非親告罪化するのではなくて、登録された一部の著作物のみ、非親告罪化の対象とする。たとえば、非親告罪で守ってほしいものについては、権利者が登録するという仕組みが考えられる」と語った。
(弁護士ドットコムニュース)