今週末のF1開幕戦オーストラリアGPで、注目のマクラーレン・ホンダがいよいよ実戦デビューを果たす。2013年の参戦発表からこれまで、かつて最強と謳われたマクラーレン・ホンダの復活には数多くのドラマがありました。そこで、開幕を前にこれまでの主な出来事を写真と共に振り返り、新生マクラーレン・ホンダの船出に備えましょう。
■ホンダ、パワーユニット供給でのF1参戦を発表
2013年5月、ホンダは東京・青山のホンダ本社で緊急記者会見を開き、2015年からマクラーレンのパワーユニットサプライヤーとしてF1世界選手権に復帰することを正式に発表した。この会見には伊東孝紳代表取締役社長と並び、当時マクラーレンのチーム代表を務めていたマーティン・ウィットマーシュも駆けつけ、「マクラーレン・ホンダという栄光ある名前を復活させることができて喜ばしく思う」とコメント、伊東社長と堅い握手を交わした。ホンダは、2008年の撤退以降はF1復帰に消極的な姿勢だったが、2012年秋頃から復帰の噂が本格化。その背景には2014年からの導入が決まっていた新しいエンジン規定があった。
■ホンダ製パワーユニット搭載のマクラーレンMP4-29Hが初走行
2014年11月14日、マクラーレンはイギリスのシルバーストン・サーキットでホンダのパワーユニットを搭載した開発用のテストカー『MP4-29H 1×1』を初めて走らせた。この日は撮影用の走行枠を利用し、タイヤもデモ走行用のものを使用。テストドライバーのオリバー・ターベイが電気システムのチェックを目的に数周を重ねた。
■公式テストデビューも2日間でわずか5周
2014年11月25日、マクラーレン・ホンダはF1最終戦アブダビGP後の合同テストで公式テストデビューを果たした。しかし、電気系のトラブルなどで初日を3周で終えると、続く2日目も再び電気系の問題で2周しか走れず、2日間でわずか5周という散々な結果に終わった。ホンダF1総責任者の新井康久氏は、年明け2月の第1回合同テストの前にできるだけ準備を整えるため、今回のテストに参加したと説明、開発は予定どおり進んでいると語っていた。
■遅れに遅れたドライバー発表、アロンソ&バトンで決着
2014年12月11日、ようやく2015年のドライバーとしてフェルナンド・アロンソの新加入とジェンソン・バトンの残留が発表された。異例の遅れとなった今回のドライバー発表は、2009年のチャンピオンで出走266戦と豊富な経験を持つバトンか、新人ながら度々印象的な速さをみせたケビン・マグヌッセンの2人のうち、どちらをアロンソのチームメイトに据えるかでチームがなかなか決断できなかったことが原因だった。結局、マグヌッセンはテスト兼リザーブドライバーに降格となったが、チームには引き続き残る。
■新車『MP4-30』を正式発表
2015年1月29日、マクラーレン・ホンダの2015年型F1マシン『MP4-30』が発表された。「ドライバーに優しい、扱いやすいマシン」というコンセプトのもとで開発されたMP4-30は、前年モデルの突起ノーズを排してスタンダードなスラントノーズを採用、リヤは極めてタイトな形状となった。マクラーレンはチーフエンジニアのピーター・プロドロモウのもと、“サイズゼロ”と呼ばれる哲学を取り入れるなど、リスク承知で新たなテクノロジーを導入している。
■新車の船出、ヘレステストはトラブル続き
マクラーレン・ホンダは2月1日からスペインのヘレス・サーキットで行われた2015年シーズン初の合同テストに新車『MP4-30』を持ち込んだ。しかし、初日と2日目はテクニカルトラブルでそれぞれ6周しか走れず、3日目以降も冷却水の圧力低下や燃料ポンプに起因するトラブルなど相次ぐトラブルで満足に周回できず、3日目が32周、最終日の4日目も35周で走行を打ち切る事態となった。
■ドライバーも来日し青山で会見「成功は間違いない。後は時間の問題」
2月10日、ホンダは東京・青山のホンダ本社でF1参戦に向けた会見イベント「Honda F1記者会見/McLaren-Honda 2015」を開催、ドライバーのフェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンに加え、マクラーレンCEOのロン・デニスも顔を揃え、日本のファンへ意気込みを示した。
■バルセロナテスト、シール不良の対策に問題
今年2回目となるバルセロナ合同テストでは、初日にホンダ製パワーユニットのMGU-Kシールが破損するトラブルが発生。再発防止には問題のシールを再設計する必要があったため、その間の走行は制限された。しかし、対策パーツを投入したテスト3日目も修正版のシールに再び問題が発生、改めて対策を迫られるなどチームは2回目のテストもトラブルに翻弄されることとなった。
■アロンソが不可解!? なクラッシュで病院へ搬送
第2回バルセロナ合同テスト4日目の2月22日、テストを担当していたフェルナンド・アロンソが3コーナーのイン側ウォールにクラッシュし、ドクターヘリで近くの病院へ搬送された。後にチームから発表された情報によれば、アロンソがクラッシュ時に一時脳震盪に陥っていたものの、それ以外はケガや後遺症も負っていないことが明らかにされている。ただ、3日ほど入院したアロンソのクラッシュ原因は、未だに感電説が根強くささやかれている。これについてもチームは、クラッシュする直前までアロンソがブレーキとシフトダウンを行っていたとして、否定している。
■最終テストで改善の兆し
開幕前最後となる2月26日からのバルセロナテストも、チームは油圧系やセンサー関連など相変わらず多くのトラブルに見舞われた。しかし、2日目のテストではジェンソン・バトンが101周を記録、この冬初めてまともな周回数を記録したチームはロングランにも取り組むなど、開幕に向けて確かな手応えもつかんだ。
■アロンソが開幕戦を欠場!
2回目のバルセロナテスト最終日にクラッシュを喫したフェルナンド・アロンソが開幕戦のオーストラリアGPを欠場することが発表された。3日間入院し、2月25日に無事退院していたアロンソだったが、脳震盪を起こして間もないため、命の危険に関わるセカンド・インパクト・シンドロームを避けるために医師の忠告を受け入れ、開幕戦の欠場を決めた。アロンソは次戦のマレーシアGPに出場するためすでにトレーニングを再開。開幕戦ではテスト兼リザーブドライバーのケビン・マグヌッセンが務める。