出生率全国1位で、子育てしやすいイメージのある沖縄県。しかし、県内の2537事業所が回答した県の2014年の労働環境実態調査で、育児休業制度を就業規則等に採用していない事業所が半数近い48.6%にもなることがわかった。
3月6日付けの琉球新報によると、県議会で議員の質問に、県の商工労働部が回答する形で明らかになった。
法律では、子どもを出産してからの1年間、育児休業を取得することが認められている。仮に規定がなくても本人が育休申請すれば事業者側も認めなければならないが、半数近い事業所が就業規定に入れていないというのはかなり高い。
企業が制度知らずに雇用契約を切ることも
ちなみに、他都道府県における類似の調査を見ると、育休制度が就業規定にないと回答した事業所は、大阪では14.9%(2013年)、岐阜では7.7%(同)、福井県では7.2%(同)となっている。調査対象の企業規模などは異なるが、沖縄が突出して高いことが伺える。
県の担当者は「今回は5人未満の事業所も調査対象にしたので高めに出た」としながらも、「それでも事業者側の制度への理解が進んでいない」と実態を明かす。非正規で働く女性も多いので、出産を期に仕事を辞めるケースも少なくないという。
沖縄県内にある労働組合のほとんどが加盟する連合沖縄の担当者も、「たしかに沖縄の育休取得率は低い」と指摘。やはり企業の理解が少ないという問題があるようだ。育休や産休中は社会保険料が免除されるにも関わらず、それを知らない企業が多く、「働かないのにお金がかかる」と言われて雇用契約を切られた、という相談が多数寄せられるという。
沖縄は中小零細企業で働く人が多い、ということも一因となっている。少人数で経営しているため、労務管理担当者を置くことができず、労働基準法に則った管理ができていない、という側面もあるようだ。また、働く側も育休を取らせないことが労働基準法違反であるということを知らない、という問題があるという。
「育休なくても何とかなる」環境が揃っている?
ただ、沖縄は全国一の出生率を誇ることでも知られている。女性が生涯に生む子どもの数である合計特殊出生率は、1.92(2013年)で29年連続の1位。2位の宮崎県が1.73なのでぶっち切りだ。
ちなみに全国平均は1.43となっている。育休制度が整っていないにもかかわらず、子どもが増えているというのは一体どういうことなのだろうか。
県内在住の3人の子持ちの40代男性は、その理由について「実家の近くに住む人が多いから」と説明する。沖縄でも待機児童問題は深刻だが、車で30分以内のところに実家がある、という人が多く、気軽に子どもを祖父母に預けることができるのだという。
「保育園だと、子どもが熱を出したら預かってくれないけど、実家なら大丈夫。東京で子どもが3人もいると大変ですけど、沖縄ならやっていくことができます」
また沖縄では、都市部では失われてしまった地域のコミュニティも健在だ。子どもがある程度大きくなってしまえば、隣近所に子どもを預かってもらうこともできるのだという。この男性は「沖縄では周囲の人が子育てに協力的。そういう点が逆に、育休制度が普及しない要因になっているのかも」とも話していた。
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