SBヒューマンキャピタル株式会社と、一般社団法人日本バスケットボール選手会(JBPA)は2015年3月10日から、「イーキャリアNEXTFIELD」(http://nextfield.ecareer.ne.jp/basketball/ )で、引退したバスケ選手の「再就職支援」を始める。人材企業がバスケ選手のセカンドキャリアを支援する取り組みは、日本で初めての試みだ。
日本バスケ界の「底上げ」にもつながる?
同社は2014年12月に、引退後のプロ野球選手のセカンドキャリアを支援する「イーキャリアNEXTFIELD」を立ち上げている。この取り組みを聞きつけ、いち早く着目したのが、JBPA会長の岡田優介選手(NBL・広島ドラゴンフライズ)だった。
かつて日本のバスケットボールチームは、企業を運営主体とするチームが多かった。しかし、2012年6月のNBL発足時からプロチームの数が企業チームを数で上回っており、14-15シーズンもプロ8チームに対し、企業チームは5チームだ。
企業チームであれば、選手はチーム加入時からその企業に「就職」していることになる。そのため引退後は、ほとんどの選手がその企業で、バスケ以外の社業の従事することが多かった。ある程度引退後の身分が保障されていた、といえるだろう。
しかし、プロチームでそれは難しい。さらにプロ野球選手と比べると、サラリーマンと同じくらいの年俸でプレーしている選手も多く、セカンドキャリア支援の需要は非常に高かったという。
「将来のキャリアに不安を抱える現役選手は少なくないと思いますが、キャリアの選択肢が一つ増えるだけでも心強く感じると思います」
岡田選手はキャリコネニュースの取材に対し、そう話す。さらに選手会では、安心してプロになれる環境が整うことで、「いままでプロを諦めていた有能な選手が、プロを目指してくれる可能性」が広がることにも期待しているという。ひいては、バスケ界の裾野が広がり、日本代表チームの強化につながるかもしれない。
実際、JBPAで約80選手を対象に行ったアンケートによると、7割の選手が「引退後が不安」だと答えている。セカンドキャリアについては「意識はしているが、具体的には考えていない」(58.2%)の回答が一番多く、「引退後、自分は社会からどのような評価をされるのだろうか…」といった、漠然とした不安であることがわかる。
バスケ選手の魅力は「大卒の多さ」
しかし再就職のポテンシャルという意味で、バスケ選手には魅力がある。「大卒」が多いのだ。アンケートでは94.9%の選手が「大卒」だったという。さらに、選手としての年俸がそれほど高くないことも、再就職には追い風が吹く。SBヒューマンキャピタル取締役の工藤泰正さんは、企業からの反応も上々だと話す。
「アスリートに一般的に期待される、一つのことをやり抜く心身の強さ、礼儀正しさなどに加えて、企画力、分析力など、思考ポテンシャルの高さは、採用企業にとっても大きな魅力となります。実際、学生時代に文武両道を実現し、活躍されている経営者やビジネスマンは数多くみかけます」
サービスの内容は、基本的には引退プロ野球選手の支援と同じだ。選手は選手会を通じて登録し、キャリアコンサルタントとの面談などが受けられる。「イーキャリアNEXTFIELD」に参画する約260社の求人紹介が受けられるほか、ビジネスマナーやPCスキル研修といったサポートも受けることが可能だ。現役選手も、セカンドキャリアに関する情報提供を受けられる。
さらに今後はeラーニングなど、練習の合間や遠征中でも、遠隔で研修やセミナーを受けられるような環境も整備していくとのことだ。「引退後も別の世界で活躍できる」とわかれば、バスケをプレーする価値やモチベーションも高まるだろう。岡田選手は、こんな期待も口にしている。
「選手を目指す若い世代にとっては、安心してプレーが出来る環境が整備されることで、非常にポジティブに捉えてもらえると思います。また、選手会が率先してキャリア設計を推進していく姿勢は、バスケットボール界全体の価値を上げ、対外的な評価にもプラスに働くと思います」
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