貴重なコラボレーションが実現した。デイモン・ヒルとジャン・アレジ、そして中嶋悟がマクラーレン・ホンダのマシンをドライブ。鈴鹿モータースポーツファン感謝デーでデモランを披露したのだ。
雲が低く垂れ込めた鈴鹿サーキット。上空からは若干の雨粒が落ちつつあったが、なんとかF1マシンが走行できるコンディション。懐かしいヘルメットを被った3人が、同じく懐かしい紅白のマシンに乗り込んでいく。
中嶋悟がMP4/4に、アレジがMP4/5に、そしてヒルがMP4/6に乗り込む。見慣れたヘルメットとマシンのカラーリングだが、その組み合わせは実に新鮮で、興奮を覚える。
3台は隊列を組み、ゆっくりとセミウエットのコースに入っていく。午前中のオープニングイベントに引き続き、V6ターボ、V10、V12と3種類のホンダエンジンの競演である。雨天のため、それほどスピードは出せなかったが、それでも往年のホンダミュージックを奏で、東コースを3周してみせた。
中嶋とアレジの元チームメイトのふたりは、マシンを降りるなりがっちりと握手を交わし、笑顔で感想を語り合う。そこにヒルが加わってくるのだが、開口一番「速すぎる! もっとゆっくり走ってくれないと!」と冗談めかして語りかける。しかし、走行を終えた3人の目は、輝いている。
マクラーレンのマシンの感想について中嶋は、開口一番「これなら勝てるはずだわ」と発言。ヒルも興奮気味に「V12のF1マシンに乗るのは、実は初めてなんだ。最高の音だね。でも、僕が乗ると、鈴鹿は雨になるねぇ」と、現役当時の思い出を交えて語った。アレジも「素晴らしいクルマだね。でも、ショートコースというのが残念。こういうクルマはずっと乗っていたいよね」と、最大限の賛辞を送った。
マクラーレン・ホンダの3台が、他のマシンと大きく違うのは、そのステアリングの“重さ”だという。中嶋は「ロータスが悪いというわけじゃないけど、これ(MP4/4)はその上を行くクルマだよね。ハンドルがとても軽いし。アレジと一緒に乗っていたティレルも、とてもステアリングが重かったんだ。アレジは、楽に運転していたけどね」。ヒルもウイリアムズと比較しても、マクラーレン・ホンダのステアリングは軽いと言う。「当時のウイリアムズは、全員マンセルにならないと運転できないくらい重かった」と、意外な事実を明かしてくれた。
最後、MCのピエール北川氏は「このマシンに乗っていたら、チャンピオンを獲れましたか?」と中嶋に質問。すると中嶋は「チャンピオンにはなれなかったかもしれないけど、表彰台には上がれていたよね」と、非常に謙虚に語った。
なお、中嶋、アレジ、ヒルによるマクラーレン・ホンダのデモランは、モータースポーツファン感謝デーの2日目(3月8日)にも行われる予定。天候にも恵まれるという予報が出ている上、3人のドライバーはそれぞれマシンに慣れているはず……初日の今日よりも迫力満点の走りを見ることができるかもしれない。