本日から開催されている鈴鹿モータースポーツファン感謝デー。この中で「F1ジャパンパワー」と題し、中嶋悟、鈴木亜久里、中野信治によるF1マシンのデモランと、「日本人がF1で勝つために」と題したトークショーが行われ、集まった観客を魅了した。
3人はレーシングスーツ姿でグランドスタンド下に設けられたステージに登場すると、“日本人がF1で勝つために必要な体力”というテーマでトーク。日本人初のレギュラードライバーとなった中嶋は「初めて鈴鹿でF1をテストした時、1コーナーでステアリングを切ることができなかった」というくらい、当時のF1マシンが体力を必要とするレーシングカーであったことを語った。そのマシンは、その前年にナイジェル・マンセルが乗っていたウイリアムズだったという。
一方の亜久里は、「初めての年(88年)は突然の出走だったので疲れたよ」と、こちらも当時の話題を披露。中野は前出のふたりから数年遅れてのF1参戦だったが、「パワステも付いていましたけど、かなり体力的には必要」だったという。その対策として、「トレーナーを付けてトレーニングもしていた」そうだ。
このままトークが続く予定だったが、天候の悪化が心配されたため、プログラムを変更して先にデモランを実施。中嶋がティレル・フォード019、亜久里がローラ・ランボルギーニLC90、中野がミナルディ・ランボルギーニM192(場内ではM189とアナウンスされていたが、急遽M192に変更されていた)に乗り込み、東コースを3周にわたって走行した。
前日に行われたテスト走行では、ミナルディのクラッチの調子は悪かったというが、スタッフが夜を徹して修復し、見違えるように良くなっていたという。非常に良いコンディションで走行を迎えた3台のマシンは、メインストレートではほぼ全開。フォードのV8、ランボルギーニV12のサウンドが、鈴鹿に響き渡った。
マシンから降りてきた中嶋は、「いやぁ、快調ですよ」と満面の笑みで応える。亜久里も笑顔でマシンを降りると「手がつっちゃった」と語りながらも、「やっぱり直線は速いねぇ。こんなのでよくレースしていたと思うよ」と笑った。中野も「いやぁ、やっぱりF1は楽しいですよね。ずっと走っていたいくらい」と、こちらも満足気であいる。
デモランが終了した後はふたたびトーク。ふたつめのテーマは「海外のサーキットに慣れること」。「日本のサーキットはグリップが高くて安定して走ることができる」と語るのは中野。そして「でも、海外のサーキットはミューが低くて、日本とは根本的に違います」と続けた。これに反応したのは亜久里だ。「僕は89年に全戦予備予選落ちした時、全部のコースを下見したから問題なかったよ(笑)。でも、メキシコの路面は酷かった」と話している。
最後にF1ドライバーを目指すため“姿勢”について。「僕らの頃は時代がよかった。みんな“目指せ世界”だった時代だから」と語るのは中嶋と亜久里だ。しかし、「今の若い子はうらやましいと思う」と亜久里は言う。「SRS-Fのようなスクールがあって、一歩目の階段は明確に見えている。それを登っていけばF1に辿りつけるんだから。でも、『何が何でもF1ドライバーになる!』という強い想いを持っていなければ、ダメだよね」と続けた。また、SRS-Fで講師を務めている中野も、「SRS-Fは、とっかかりとして利用するには最高。ぜひお手伝いができればいいと思う」と語っている。また、SRS-Fの校長も務める中嶋は、「まずは触れて、体験してほしい。そこで可能性を感じることができれば、(目標に向けての)絵を描いていけばいいんだから」と、将来のF1ドライバーたちへメッセージを送った。