「おいしい」「ヘルシー」のイメージで世界的に人気が高まっている日本食。アメリカ西海岸では1ブロックごとに日本食の店があり、年々増えているという。
2015年3月2日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、外食として人気が高い日本食を、世界の「家庭」にまで広めようと奮闘する人たちの挑戦を紹介した。
2年前に日系スーパー「マルカイ」を買収
カルフォルニアやハワイに11店舗展開している店「マルカイ」は、50年の歴史をもつ日系のスーパーだ。商品の多くは日本からの輸入品だが、外食での日本食ブームには乗れず、訪れるのは日系人や現地の日本人ばかり。
そんなマルカイを、2年前に大手ディスカウントチェーン「ドン・キホーテ」が買収した。マルカイコーポレーションの関口憲司社長は次のように語る。
「全米で売っていくなら、白人や黒人もお客様にしていかないと商売は成り立たない」
関口社長は日本で食料品も扱う「MEGAドン・キホーテ」を立ち上げ、不振のスーパーを繁盛店にしていった経歴を持つ。新業態オープンに欠かせない人物だ。
マルカイのロサンゼルス店内を見回り、「何で木の根っこが売ってるの、って話になる。このままじゃ絶対買えない」と問題点を指摘した。ゴボウなど、地元の人には分からないものをそのまま並べているのだ。
LA近郊の町コスタ・メサでは、新しい店「TOKYO CENTRAL」(トウキョウセントラル)のオープン準備に追われていた。店内は英語の大きな文字でポップを吊り下げ、どこに何があるか一目瞭然だ。日本のドンキそのままの、にぎやかで活気のある店内になった。
イートインの焼き鳥に米国の主婦も大喜び
一番力を入れるのが惣菜コーナーで、店の約4分の1を占める。多くの種類から選べて、450グラムあたり950円で量り売りする。関口社長は表情を引き締める。
「ここが勝負だと思っている。惣菜ゾーンのインパクトをお客の心にすり込む。ここは必要以上にこだわっています」
オープン後は、これまで入らなかった地元の客も大勢訪れた。焼きそばの鉄板調理の実演販売を行ったり、日本ならバックヤードに隠す寿司ロボットもあえてお客に見せてアミューズメント化した。
揚げ物のできあがりを、和太鼓を打ち鳴らして知らせるなど和テイストで客を楽しませた。客は「この売り場がすごくいい」「なんだか知らないけど美味しそう」と雰囲気に乗せられている様子だ。
イートインコーナーで焼き鳥をほおばっていた主婦は、「完璧よ。忙しくて時間がないとき、できあがったものを持って帰れるのはすごくいいわ」と喜んでいた。「フェイスブックで知った」という人もおり、客が客を呼ぶ好循環も起きているようだ。
日本の農林水産物輸出額は、和食ブームの高まりで昨年より11%増えて6100億円になったが、政府の目標は「2020年までに1兆円」だという。
番組では農林水産省から外務省に出向し、アメリカで日本食の普及に取り組んでいるサンフランシスコ総領事館の浜崎宏正さんの取り組みも紹介した。
家庭料理に浸透すれば大成功
浜崎さんは、アメリカのIT関連企業が集まるシリコンバレーで、ヤフーやグーグルなどの社員食堂運営会社の料理人たちに、肉じゃがや筑前煮などの「日本の家庭料理」を教える料理教室を開催していた。台湾で農水省が主催する「日本食・食文化の世界的普及プロジェクト事業」の様子も映し出した。
西海岸のドン・キホーテ新スーパーでは、活気ある総菜売り場がけん引役となり他の日本食材も好調に売れている様子だった。関口社長は、
「様々な人がお惣菜を食べて、作れるようになってくれれば最高だなと思います」
と手ごたえをつかんだように笑顔で語った。
番組が取り上げたのはオープン初日のことで、新しい店が賑わうのは当たり前かもしれない。関口社長が言うように、これらの惣菜に慣れて家でも日本食をつくる家庭が増えたとき、初めて大成功と言えるのではないだろうか。(ライター:okei)
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