2015年03月03日 19:51 弁護士ドットコム
日弁連は3月3日、東京・永田町の参議院議員会館で、安倍政権が実現を目指している「カジノ解禁」の問題点を議論する集会を開いた。静岡大学人文社会科学部の鳥畑与一教授は基調講演で、「日本全体をカジノ漬けにしないと成立しないビジネスだ」と批判した。
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国内では現在、カジノの設置が認められていないが、観光客の呼び込みなどの経済効果が高いとして、「解禁論」が唱えられている。鳥畑氏によると、東京・お台場のカジノ構想が浮上した1999年ごろから議論が進められてきたが、2010年ごろからは、カジノに商業施設やホテルを併設する「統合型リゾート」(IR)構想としての議論が活発になった。安倍政権も2020年の東京オリンピックに向けて、IR構想の実現を目指している。
一方で、「ギャンブル依存症の人が増える」「本当に経済効果はあるのか」といった声も根強くある。鳥畑氏によると、IRの経済波及効果や投資規模の推計が膨れ上がっており、毎年1兆円のカジノ収益を確保しなければ成立しないレベルになっているという。鳥畑氏は「これはカジノで年間10万円負ける人が1000万人も出てくる計算だ」とたとえを持ち出して、説明した。
さらに、「アジアのIR市場は急速に飽和化が進んでいる。(海外からの客は期待できないため)国内で稼がなければならず、投資規模が巨大であればあるほど、日本人がカジノで負ける必要がでてくる。つまり、日本全体をカジノ漬けにしないと成立しないビジネスだ」と批判した。
仮にビジネスとして成立しても、地域経済にとってプラスにならない可能性もあるという。鳥畑氏が昨年9月、IRで生き残りを図った米アトランティックシティを調査したところ、「ショピング街はガラガラで、潰れたホテルやレストランの空き地が目立っていた」そうだ。
IRが、カジノの収益をあてにして、ホテル代や飲食費を割引して顧客を抱え込んでしまうため、地域経済にはお金が落ちない。さらに、不安定で低賃金な雇用のため、地元の雇用の増加にも貢献しないという。鳥畑氏は「IRはシステムとして行き詰まっている」と警鐘を鳴らした。
(弁護士ドットコムニュース)