今シーズンからWEC世界耐久選手権のLMP1クラスにニッサン/ニスモが投入するニッサンGT-R LMニスモ。FFレイアウトを採用したこのマシンについて、アウディ、ポルシェ、トヨタの3メーカーの首脳陣がそれぞれの見解を語った。
1999年以来、16年ぶりにスポーツカー耐久レースの最高峰に参戦するニッサンは今シーズン、ミッドシップという従来の考え方を覆すFFレイアウトのLMP1カーを開発。外観もフロントに長い特徴的なものとなり、実戦デビューに向けて注目が集まっている。
アウディでLMP1プログラムを率いるクリス・レインケは「我々は昨年、大きく異なる3つのコンセプトを目にしてワクワクした。そして、より大きな違いのある4つ目のコンセプトを見て、さらに興奮しているよ」と語る。
「こんなにも勇敢なアプローチをとった彼らに敬意を表す。そして、今シーズン彼らが上位にいるとすれば、それはものすごいことだ」
一方、ポルシェのLMP1プロジェクトでテクニカルディレクターを務めるアレックス・ヒッチンガーはニッサンのコンセプトについて「勇敢だがリスキー」だと語る。
「そのコンセプトは大きな損失を含んでいる。ただ、考えられる利点がそれらの損失を上回るかどうか、机の前で写真をみるだけで判断することはできない」とヒッチンガー。損失のひとつとして、GT-R LMニスモがライバルよりも細いリヤタイヤを採用していることを挙げている。
「フロントよりもリヤの方がかなり細いタイヤで走るのならば、タイヤのポテンシャルを犠牲にしなくてはならない」
また、TMGのテクニカルディレクターを務めるパスカル・バセロンも、同様の意見を語る。
「レースというのは“妥協”なんだ。あるエリアでゲインを得ることは、その他の部分を失うということだ。彼らのコンセプトが機能するのかどうかを注視する必要があるね」
とはいえバセロンは「モーターレーシングで学ぶことのひとつは謙虚さなんだ。ライバルを過小評価することはない」として、今季のニッサンのチャンスを否定しているのではないのだと語った。
「GT-R LMニスモの野心的なコンセプトは、LMP1のレギュレーションの中でマシン前方の空力を自由に活用しようという試みなんだ。フロントにエンジンを置くことで、テクニカルディレクターのベン・ボウルビーが“スルーダクト”と呼ぶモノコックのサイドに沿って空気を導くことができ、マシンの後方で空力的なゲインを得るんだ」