101周、約470km。バルセロナF1合同テスト2回目、走行2日目。マクラーレン・ホンダはプレシーズンテスト10日目にして、ついにテストらしい周回数を走り込んだ。セッション後のデブリーフィングは予定時間を大幅に過ぎ、30分近く遅れてメディアの前に姿を見せたジェンソン・バトンは上機嫌だった。
「今日は話すことがいっぱいある! 遅刻してごめん、エンジニアとのデブリーフィングで話すことが、ものすごくたくさんあったんだ。エンジニアに話すことの半分も覚えていなかったけどね!」
午前中は2~7周の短いランを繰り返し、新型フロントウイングのフロービズや空力セッティングの比較テストを行った。車高、フロントフラップなどのセッティングを変え、その影響を測定するデータ取りだ。バトンはほとんどコクピットから降りることもなく、午前中のセッションだけで44周を走行した。
「今まではクルマが途中で止まってしまっていたからエアロの比較テストもできなかったけど、信頼性の高いクルマがあればそれもできるし、今日はかなり多くのポジティブな要素が手に入ったよ。100周なんて、他チームはテストで普通に走っているかもしれないけど、まだまだマシンパッケージのことを学ばなければならない僕らにとっては何千周にも匹敵するような価値があるよ!」
午後にはタイヤテストを中心としたプログラムで、ミディアムタイヤを履いて14周というロングランを2度にわたって行った。これにはマクラーレンの今井弘プリンシパルエンジニアも「非常に良いデータが取れました」と笑顔を見せる。
この日バトンの自己ベストタイムは、午後にソフトタイヤを履いて5周のランでアタックして記録したもの。ほぼ同時刻にメルセデスが同じソフトタイヤを履いてアタックした2日目のトップタイム1分22秒797からは約2.8秒落ちだった。
燃料搭載量がわからないことはもとより、マクラーレン・ホンダのマシンはほとんどセットアップをしていない“素の状態”であり、パワーユニット面でも熟成はまだまだといった段階なだけに伸びしろは大きいはずだ。
「タイムを見れば、速さがまだ十分じゃないことはわかっているよ。クルマのフィーリングという点でも自分の理想にはまだ遠いし、やるべきことは山積みだ。でも今日かなり前進できたし、エンジニアたちが今日のデータを分析して、ここからあと2日で、さらに前に進むことができる」とバトンは言う。
今井エンジニアも「現段階では、こんなものでしょう。まだまだ伸びしろはありますから大丈夫ですよ」と余裕を見せている。
ただし、実際にはセッション終了直前に電気系トラブルが発生してコース上にストップした。チームは詳細を調査中としているが、ガレージに戻ってきたバトンのもとに、すぐさまホンダのエンジニアたちが集まって状況を聞いていたところを見ると、パワーユニット周辺の電装系の問題だった可能性もある。それでもバトンもエンジニアも表情には笑顔すら浮かべていて、この1日で彼らが大きなものを得たことを物語っていた。
(米家峰起)