話そうとすると言葉がスムーズに出てこない、つっかかってしまうなどの症状に悩む吃音者向けの就職マッチングサイトが、この夏のスタートに向けて動き出している。
企画を進めているのは、中京圏の吃音者らが昨年設立したNPO法人「吃音とともに就労を支援する会」。団体の理事で自身も吃音者である森川兵一さん(39)によると、吃音者は人口の1%はいると言われており、特に若い人はコンプレックスに感じることで症状がよりひどくなることがあるという。
「周囲の理解」があればパフォーマンスを発揮できる
吃音者は就職活動でも苦労することが多いようで、「面接に行っても自分の名前を言おうとして詰まってしまったり、肝心なときに声が出なかったりして落ちてしまう」と森川さんは明かす。
集団面接になると声を出すのが怖くなってしまい、一言も発せなくなる人もいるという。就職した後も吃音によって電話対応や社内でのコミュニケーションに苦心し、せっかく入った会社を数年で辞めてしまうケースも少なくない。
話すことに苦手意識があるため、営業などを避けて、製造業の技術職など話をしなくてもいい職種を選ぶ人も多い。
現在進めているマッチングサイトは、吃音症状を持つ求職者と、企業とを結びつけるもの。求職者と企業が互いに情報を閲覧することができ、面接の希望があれば無料で仲介する。新卒と中途、どちらの求人も扱う予定だ。現在登録者と企業を募集している。
企業に登録してもらうにあたっては、吃音者のことを理解してもらうよう、吃音に関する資料を提供したり、実際にNPOのスタッフが出向いて吃音について説明したりする。
「
上司や同僚など周囲から『努力すれば吃音は治る』と思われることもありますが、そういった性質のものではないということを分かってもらうことが重要です
」
周囲の理解があれば吃音者のプレッシャーも軽減され、萎縮することなくパフォーマンスを発揮することができる。また、リラックスすることができれば、結果として吃音症状が軽くなることもあるという。
吃音の子どもを持つ親からも「将来就職できるのか」と相談
森川さんは吃音者には「真面目で賢い人が少なくない」とも指摘する。大学の推薦枠で大手企業の面接を受けたりするが、やはり面接で喋ることができずに、就職では苦労する。その一方で、きちんとした環境が整えば人一倍頑張る傾向があるということだ。
「優秀で高学歴の人も多い。ただ、頭では色々考えることができても、声に出そうとするとブロックされてしまうんです。喋るのが苦手という部分だけを大目に見ていただければ、企業の中でも十分力になることができると思います」
同法人の活動は2月26日付の中日新聞でも紹介され、問い合わせが殺到しているそうだ。吃音者だけでなく吃音者の子どもを持った親からも「将来ちゃんと就職できるのか」といった相談が寄せられたという。普段表には出てこないが、本人も周囲もそれだけ心配しているということなのだろう。
ツイッターには、「吃音者は、吃音を理解してもらうまでに大きなハードルがある。その部分が最初から取り払われているところを探せるのは素晴らしいと思う」と評価する声が出ていた。