2015年02月28日 07:01 弁護士ドットコム
3Dプリンタで作った高級腕時計「ロレックス」のレプリカを作った人が現れ、海外サイトなどで話題を呼んでいる。レプリカはロレックスの腕時計「サブマリーナ」がモデルで、写真を見ただけだとよく似ているように思えるが、サイズは「本物」の約3倍あるようだ。
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制作者はさらに「3Dプリンタ用のデータ」をネットで公開しているという。ただ、公開されているデータは、ロゴ部分などが改変され、本物とは違う表記がなされているようだ。131個のパーツからなり、3Dプリンターでの出力には約30時間かかるが、パーツを組み立てて中にクオーツを入れれば、「置き時計」として使用可能だという。
もし、3Dプリンタを使って「ブランド時計」そっくりの模型を作ったり、3Dプリンタ用のデータを配布したりすれば、法的に問題なのだろうか。たとえば、サイズやロゴが違えば、大丈夫なのだろうか。意匠法にくわしい早瀬久雄弁護士に聞いた。
「時計など、機械工芸品のデザインは、日本では主に『意匠法』と『不正競争防止法』で保護されています。
個人的に楽しむために、時計のレプリカを作ることは問題ありません。意匠法や不正競争防止法などによる保護は、個人的に楽しむ場合には及ばないからです。
一方、3Dプリンタ用のデータを公開するとなると、難しいところです。個人的・家族内で利用するという範囲を超えてきますから、問題となる余地はあるでしょう」
どんな問題があるのだろうか?
「たとえば、誰かが、公開した3Dプリンタ用のデータを悪用し、ニセモノを作って売るような行為をした場合を考えてみます。こうした行為は意匠権侵害や、不正競争防止法違反になり、場合によっては、3Dプリンタ用のデータを提供した人も『それを手助けした』として、責任を追及される可能性があると思います」
意匠法と不正競争防止法とで、何か違いはあるのだろうか?
「意匠法は『特許庁に登録されたデザイン』を保護する仕組みです。登録されたデザインは20年間、保護されます。
意匠登録は物品の種類別に行われますので、たとえば腕時計として登録されているデザインを『単なる置物』に利用するのであれば、問題にはなりません。
一方、不正競争防止法によるデザイン保護は、意匠法と違って、事前登録制ではありません。多くの人が知っている商品のパクり品や、ニセモノを販売すれば、『不正競争行為』として損害賠償責任などを負います。
『サブマリーナ』など、ロレックスの時計のデザインは日本でもよく知られているため、『周知なデザイン』と認定され、不正競争防止法の保護対象とされた裁判例があります」
今回の件についてはどうだろうか?
「今回公開された3Dプリンタ用データと本物を比べると、ロゴやサイズ、色使い、日付表示の有無などに違いがあり、用途なども異なります。
プリントアウトしたものが、ロレックス製品と混同される可能性は考えにくいので、不正競争防止法との関係では『問題なし』と判断される可能性が高いでしょう。
しかし、意匠法との関係では、ロレックス社が意匠登録しているデザインとの類似性を別に考える必要があります。
また、一般的な話でいうと、意匠権侵害や不正競争防止法違反の判断は、ケースバイケースで判断されますので、ロゴや大きさが違うというだけで大丈夫だとは言えません」
早瀬弁護士はこのように指摘していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
早瀬 久雄(はやせ・ひさお)弁護士
特許技術者を経て、弁護士登録。特許事務所とのコラボにより知財ワンストップサービスを提供し、現在も弁理士として出願業務にかかわる。ブログにて、知財などの情報も発信中。
事務所名 :あいぎ法律事務所
事務所名:あいぎ法律事務所
事務所URL:http://law.aigipat.com