「働きがい」に関する調査・分析を行う専門機関「Great Place to Work(GPTW)」は2015年2月25日、東京・新宿区のホテルで「日本における働きがいのある会社」の表彰式を行った。あわせて、2015年「働きがいのある会社」の傾向を発表している。
働きがいは「従業員の声」が決める
GPTWは1998年から「働きがいのある会社」を国際調査し、ランキング形式で発表している。その対象は現在49か国、7000社超にのぼり、日本での調査も2007年からスタートした。調査の特徴は、働きがいを評価する際に「従業員の声」を採用していることだ。
「信用:従業員がマネジメントをどれだけ信用しているか」
「尊敬:従業員がマネジメントからどのくらい尊敬・尊重されていると感じているか」
「公正:従業員がマネジメントに公正に扱われていると感じているか」
「誇り:従業員は仕事に対してプライドを持っているか」
「連帯感:従業員は職場で連帯感を感じているか」
日本での2015年のランキングは、大企業部門(従業員1000人以上)が1位にグーグル、2位に日本マイクロソフト、3位にアメリカン・エキスプレスと外資系企業が並んだ。
中企業部門(同100~999人)ではVOYAGE GROUP、小企業部門(同25~99人)ではアクロクエストテクノロジーがそれぞれ1位となった。各部門の1位企業の担当者は、表彰式で次のようにコメントしている。
「自由に好きな働き方ができるグーグルに入れて、本当に感謝しています。ここにいる皆さんと、力を一緒にして、より働きやすい国にできれば嬉しいなと思います」(グーグル)
「発表には、寝耳に水というか、寝耳にジャックダニエルくらいびっくりした。社員全員で獲れた賞だなと思います」(VOYAGE GROUP)
「創業以来『全社員会議』を月に1度やっている。これは取締役会の上をいく、とんでもない組織なんです。たとえばこの会議で全社禁煙に決まって、『社長、たばこ辞めてください』と言われました(笑)。こうした会社への参加意識や公平性が、1位につながってきたんじゃないかと思います」(アクロクエストテクノロジー)
中小企業も「働き方の選択肢」を増やしている
従業員の「働きがい」を高めるために、会社は何をどうしたら良いのか。GPTWでは2015年の「働きがいのある会社」に3つの特徴があるとまとめている。
1つ目は「新入社員が入社したあとのフォローアップが手厚くなっている」こと。「実践的な研修」や「気さくに相談できる環境」をつくるなど、入社直後から「親しい関係性を築いていけるようなプログラム」を組む企業が多く見られたという。
2つ目は「柔軟な働き方を支援するために、従来の発想を超えた制度が追加されている」こと。産休や育休を取りたい場合に「代替人員が速やかに採用され、休暇を取れる」制度や、社内結婚したカップルのうち一方が転勤になった場合は「希望した場合、2人で異動できる」制度を導入する企業が、従業員から高評価だった。
3つ目は「SNS等に多くの従業員が気軽に参画し、全社を巻き込んだ対話を喚起している」こと。新入社員の業務日誌を全社員が閲覧して、ポジティブなフィードバックをしたり、業務改善事例をすぐに社内ネットワークで共有するなど、企業に適した「場」を導入し、コミュニケーションを頻繁に行っている企業が多かったそうだ。
「特に中小企業では、働き方の選択肢を非常に増やしている傾向にある。制度は充実していなくとも、社員自身の裁量を最大限発揮してもらおう、といった特徴がありました」(GPTW日本シニアコンサルタント・今野敦子氏)
投資リターン率はTOPIXファンドの約5倍に
コミュニケーションや個人の希望を重視した取り組みが多いが、このような方策が「働きがい」を高め、従業員のモチベーションに直結するようだ。
イベントの中では、2014年の「働きがいのある会社」のうち、上場15社でポートフォリオを組んで投資をした場合のリターン率について、リクルートマネジメントソリューションズのシミュレーション結果が発表された。
これによると、2008年末から5年間投資した場合のリターン率は252.8%。通常のTOPIXファンドの51.6%と比べて約5倍だった。この結果についてGPTW・日本副代表の平田英司氏は、次のように説明している。
「株価イコール業績とは言いにくい部分もありますが、株価に着目した場合には大きなパフォーマンスがあがっている。『働きがいのある会社』が中長期的な評価を得られている、というのが調査にあらわれているのではないか」
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