2015年02月25日 13:21 弁護士ドットコム
女子高生によるマッサージや添い寝、屋外デートなどを売りにした接客サービス「JKビジネス」について、愛知県は全面的な禁止に乗り出す方針を固め、2月25日開会の定例議会に県青少年保護育成条例の改正案を提出した。JKビジネスを包括的に規制する条例は、全国初となる。
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愛知県によると、改正案では、18歳未満の少女が個室でマッサージや添い寝などをする「JKリフレ」や、散歩と称して屋外デートする「JK散歩」などを「有害役務営業」と位置づける。18歳未満に接客させたり、店へ立ち入らせることを禁止する。
愛知県は立ち入り調査や最長6カ月の営業停止の命令をおこなうことができる。命令に従わなかった場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科す。
愛知県によると、規制強化の背景には、JKビジネスが少女売春の温床となっている実態があるという。JKビジネスが多様化するなか、既存の法律では被害にあった後でしか対応できないため、被害を未然に防ぎ、青少年を守ることを目的にしている。今回の動きをどう見ればいいのか、刑事事件にくわしい落合洋司弁護士に聞いた。
「近年、いわゆる『JKビジネス』が各地で問題となり、労働基準法(危険有害業務)や児童福祉法(有害支配行為)などによる検挙者も出ている状況です」
落合弁護士はこう切り出した。なぜ、規制を強化する必要があったのだろうか。
「既存の刑罰法令は、JKビジネス自体を対象にしていません。また、JKビジネスには、目に見える『被害者』が存在せず、内偵や捜査が容易ではなかったことから、抑止効果にも限界がありました。
こうしたことから、JKビジネス自体を全面的に規制対象にしようとする流れが出てくることには、それなりに必然性があります。国民の中でも、このような規制が必要だと考える人は少なくないでしょう」
今回のような地方自治体の「条例」による規制強化は、適切なのだろうか。
「JKビジネスは一定の地域に特有の問題ではなく、日本全国で広く問題になっていることです。
そういった規制を、特定の地方自治体の条例でおこなうことは、はたして公平で、妥当な結果につながるかという疑問があります。
また、条例改正案ではJKビジネス自体を『有害役務営業』として規制対象にしようとしていますが、規制対象が広くなるほど、包括的に『有害』とする根拠に疑問が生じる可能性があります。
逆に、規制対象を狭く限定すれば、既存の刑罰法令と別に新たに規制する必要性に疑問が生じかねません。何をどこまで規制対象にするのか悩ましいものがあります」
このように指摘したうえで、落合弁護士は次のように述べていた。
「こういったビジネスは、規制すれば規制の網をかいくぐろうとするもので、『いたちごっこ化』する可能性も高いでしょう。今後、慎重かつ幅広い議論が必要ではないかと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:泉岳寺前法律事務所
事務所URL:http://d.hatena.ne.jp/yjochi/