2015年02月24日 12:41 弁護士ドットコム
大手ベビー用品メーカー「エルゴベビー」の製品としてネット販売されている「抱っこひも」の半数以上が偽造品だったことが、明らかになった。なかには、子どもを支える腰や肩のベルトの強度が安全基準を下回っていたケースもあるという。
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エルゴベビーの抱っこひもは、シェア50%を超える人気ブランド。横浜市の輸入代理店の公式サイトによると、正規店以外のネットショッピングサイトで、同社製としている抱っこひもを無作為に25個購入したところ、14個が偽造品だった。
抱っこひもをめぐっては、使用中に乳幼児が落下する事故があいつぎ、製品の改良や使い方の周知が課題になっていた。基準を下回る強度の「偽造品」を製造した業者には、どのような問題があるのだろうか。事故が起きた場合の責任はどうなのか。西田広一弁護士に聞いた。
「基準を下回る強度の偽造品を製造・販売した業者に対して、購入者は、製品を返して、売買代金の返還を請求できるでしょう。偽造品だということが証明でき、詐欺となる場合は、詐欺取消しとして代金の返還請求ができます(民法96条1項)。
また、ネットで商品を売っていた販売業者が、基準を下回る強度の偽造品であることを知っているか、知ることができるような状況だった場合、その業者は債務不履行責任を負うことになります。購入者は、この場合も、契約を解除して、代金の返還請求ができるでしょう」
では、購入者は「偽物だったからお金を返して」と業者に連絡すれば良いのだろうか。
「はい。けれど、実際に代金が回収ができるかは別問題です。販売した業者を特定すること自体が難しかったり、通常の請求をしても代金回収に応じなかったりと、一筋縄ではいかないかもしれません。こういった場合は、裁判をしても、支払わない可能性が高いでしょう」
何か良い手立てはないだろうか。
「詐欺が明らかな場合は、警察に通報して、代金を振り込んだ口座を凍結する方法もあります。もし、代金をクレジットで支払ったときは、カード会社に請求停止の申立をする方法もあります」
偽造品と知らずに購入した結果、強度不足で事故が起こった場合、業者を訴えることはできるのだろうか
「今回のケースは、基準を下回る強度の偽造品です。商品に欠陥があるといえるでしょう。もし、赤ちゃんが、この製品の欠陥のために落下して事故が起きた場合、赤ちゃんのケガと商品の欠陥との因果関係は明らかです。
購入者は、製造業者や販売業者らの責任を追及することができます(製造物責任法3条)。また、購入者は、販売業者に対して、赤ちゃんのケガで発生した損害の賠償請求もできます(民法415条)。
しかし、業者の責任を問えるとは言っても、大事なお子さんに何か事故があってからでは遅いです。安全を第一に考え、良質な業者を見極めて、できるだけ正規代理店を通じて購入するなど、十分に注意する必要があるでしょうね」
心当たりのある親は、まずは、手元にある抱っこひもが正規品か偽造品か、確認しておこう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西田 広一(にしだ・ひろいち)弁護士
1956年、石川県小松市生まれ。95年に弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪を拠点に活動。得意
案件は消費者問題や多重債務者問題など。大阪弁護士会消費者保護委員会委員。関西学院大学非常勤講師。最近の興味関心は、読書(歴史小説)、食品の安全、発達障害など。
事務所名:弁護士法人西田広一法律事務所
事務所URL:http://law-nishida.jp