2015年02月23日 11:51 弁護士ドットコム
ジャーナリズムの未来に関心をもつ東京大学の学生が3月からアメリカに行き、新興ネットメディアやマスメディアのデジタル部門のキーパーソンに突撃取材する。そのための資金を集めるため、取材の目的と計画をインターネットの「クラウドファンディング・サイト」で明らかにして支援を募ったところ、約100人から80万円以上の寄付が集まった。ジャーナリストの活動を支える新たな動きとして注目される。
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取材資金をクラウドファンディングで集めるというユニークな試みをしたのは、東京大学経済学部4年の大熊将八さん(22)。今回の資金募集プロジェクトはまもなく締め切られるが、大熊さんは「当初思いもよらなかった方からも支援いただけて、とても感激しています。支援いただいた方の意見も参考にしながら、できるだけ多くの新興メディア関係者に会って、現場の生の話を聞いてきたいと思います」と話している。
大熊さんは、東大での学業や部活動と併行して、メディア業界の新しい動向に関する情報発信をおこなってきた。この1年間は、津田大介さんや佐々木俊尚さんといったジャーナリストや新聞・テレビの関係者に取材して、自身のブログでインタビュー記事を発表したり、新しい形のニュースメディアとして注目を集める「ニューズピックス」で記事を書いたりしてきた。
その活動を海外にも広げようと考え、ネットメディアの先進国であるアメリカで、注目される新興メディアや大手メディアのデジタル部門のキーパーソンにインタビュー取材することを計画した。しかし、一定期間、アメリカに滞在して取材を続けるには、お金がかかる。そこで、クラウドファンディングという仕組みを使って、取材資金を集めることを考えた。
「クラウドファンディングを使ってみようと思ったのは、2013年の秋に江原理恵さんという女性が、『ニューヨークのスタートアップを1ヶ月突撃取材する』というプロジェクトで170万円を集めたという先例があったからです。江原さんにクラウドファンディングのコツもうかがって、どのようにアピールするかを考えました」
そう語る大熊さんは今年1月下旬、クラウドファンディング・サイト「Makuake」で、アメリカでの取材資金を募るプロジェクトを開始した。自己紹介とこれまでの活動のほか、アメリカの新興メディアを取材したい理由や想定している取材先のリストを具体的に説明し、「渡航費と2ヶ月間の滞在費・取材費合計45万円を調達したいと考えています」と記した。
そして、記者やジャーナリスト志望者の多くがメディア業界の将来に不安を感じている現状に触れながら、「今回のプロジェクトでは、メディアに思いをよせる皆さんをメンバーにして、対話しながら一緒にメディアの未来について考えていきたい」と訴えかけた。
この大熊さんの思いが伝わり、プロジェクト開始からわずか2日後には、目標額の45万円が集まった。そこで、できれば滞在期間を当初予定の2ヶ月から3ヶ月に伸ばしたいと、次の目標を65万円にあげたところ、これも突破。スタートから約1ヶ月がたった2月23日の時点で、94人から85万9100円が集まっている。
このように取材活動の資金をクラウドファンディングで集めようという動きは、少しずつ広がっている。昨年12月から今年1月にかけて、東京大学2年の松井友里さんがクラウドファンディング・サイトの「READYFOR?」で、「姉妹で世界20都市のスタートアップを50社取材し、発信したい」というプロジェクトを実施し、84万3000円を集めた。
また、全国の各地域のプロジェクトを支援することをコンセプトに掲げるクラウドファンディング・サイト「FAVVO」では、島根県在住のローカルジャーナリスト・田中輝美さんが2月4日から、「島根の面白い人“紹介本”を作りたい!」という資金募集プロジェクトを始めた。開始からわずか1日で、目標額の30万円を達成。プロジェクトはまだ続いているが、2月23日午前10時の時点で、110人から66万4000円が集まっている。
大熊さんの資金募集の締め切りは2月25日18時。いよいよ3月3日にはアメリカへと出発し、ニューヨークを中心に、いま勢いのあるメディア企業への取材を行う。「ただ話を聞くだけでなく、できればインターンシップという形で就業体験もして、バズフィードやクォーツといった新興メディアの内部がどう運営されているのかも見てきたいですね」と大熊さんは抱負を語っている。
大熊さんのクラウドファンディング募集ページ
https://www.makuake.com/project/journalismproject/
(弁護士ドットコムニュース)