2015年02月22日 13:11 弁護士ドットコム
日本で国産初の水洗腰掛け式便器が生まれてから100年余り。日本発のトイレは今や世界に誇る高性能製品との評価も聞かれる。誰もが必ず1日数回は訪れ、1人きりになれる癒しのスポットでもある重要な存在のトイレは今、どんな進化を遂げているのか。国内の2大トイレメーカーのTOTOとLIXILに、家庭用トイレの最新事情を聞いた。(取材・構成/藤原秀行)
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(写真:LIXILのトイレを操作できるアプリ「MySATIS」。おしりを洗うシャワーの位置、温水の温度や強弱などを好みで調節できる)
両社の製品を眺めてみて、まず目に留まるのが、節水機能が格段にアップしてきたことだ。1990年代後半から2000年代にかけて、環境意識の高まりとともに、少ない水でも勢い良く便器の中に流れ込むように形状を工夫するなど、トイレメーカーが取り組みを強化してきた。
TOTOの場合、40年ほど前は「大」で1回当たり20リットルも水を使っていた。だが、現在は最小で3.8リットルと、かつての5分の1以下までセーブしている。LIXILも、約40年前の「大」は16リットルだったのが、今は5リットルがスタンダードだ。
業界団体の日本衛生設備機器工業会によれば、1回の洗浄水量が6リットル以下の「節水トイレ」は、2012年に出荷数が累計で1000万台を突破。環境に優しく水道代節約になる点が歓迎されているうえ、政府が導入した「住宅エコポイント制度」の対象製品となっていることなども出荷の伸びに寄与したようだ。
メーカーにとって、節水はもはや不可欠のコンセプトとなっている。一般家庭での節水トイレの普及率はまだ1割強とみられるだけに、今後も需要は伸びそうだ。同工業会は「日本のトイレがすべて節水トイレに置き換わった場合、1年で東京ドーム596杯分に相当する水を節約できる」と試算、普及をさらに後押ししていく構えだ。
両社は節水以外にも、汚れにくさや掃除のしやすさ、快適性をとことん追求してきた。TOTOは、便座に座ると自動的に便器へ水道水を霧状に吹き掛けることで汚れが付着しにくくする「プレミスト」機能を搭載。さらに、便器の表面にある凹凸を独自技術で100万分の1ミリのナノレベルでなくし、汚れが付いても落としやすい構造としている。掃除の手間自体を減らそうという発想だ。
今年2月に発売した主力の「ネオレスト」シリーズの新商品では、トイレ個室内のにおいを抑えることを重視。次亜塩素酸を含む「きれい除菌水」を用いたフィルターを便器に取り付け、においの原因となるアンモニアを取り除いている。きれい除菌水は、洗剤や薬品を用いずに水道水を電気分解して作り出しており、時間が経てば普通の水に戻るため、環境に優しいというメリットも持つ。同社は「汚れとにおいを抑えることで、いつもきれいなトイレを実現できる」と強調する。
一方、LIXILはトイレ業界で初めて、高濃度のイオンを放出して除菌・脱臭を図るシャープの「プラズマクラスター」機能を便器に採用。今年2月には、この機能を使えるトイレのラインナップを大幅に拡充した。
同社は「イオンを使うことで、便座の裏や温水シャワーノズルの周りまで効果的に除菌できる。浮遊しているカビ菌などを取り除くことで、においの発生も抑える」と効果をアピール。他にも、便座に継ぎ目をなくして汚れが入り込まないようにするなど、清潔さと掃除のしやすさを高める細かい工夫を施している。
ユニークなのが、無線技術「ブルートゥース」を利用し、スマートフォンでシャワー部分の操作ができるようにしたことだ。専用アプリをダウンロードすれば、便器のふたや便座の上げ下げがスマホで操作できるようになるほか、シャワーの吹き出る強さや位置も自由に変えられる。好みに合わせた設定を登録することで、自分のスマホを持ってトイレに入れば、自動的にその設定に変更してくれるのが売り物だ。
アプリはiPhone、アンドロイドスマートフォンの両方に対応。日々の排便状況を記録して健康管理に役立てられるカレンダー「トイレ日記」を搭載しているほか、スマホに内蔵した音楽を便器の横に付いたスピーカーから流し、自分だけのリラックス空間に変えられる。
「これからもトイレ空間の汚れやにおいといったストレスをなくすことに注力していきたい」と口をそろえる両社。今後も快適なトイレライフ実現を目指した熱い技術開発が続きそうだ。
(税理士ドットコムトピックス)