2015年02月21日 15:21 弁護士ドットコム
警察の階級章を偽造・販売したとして、神奈川県警は2月12日、相模原市の会社員男性を公記号偽造と偽造公記号使用の疑いで逮捕した。警察の階級章を「公記号」とみなした摘発は全国で初めてという。
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報道によると、男性は昨年1月~4月、県警の巡査部長級の階級章を偽造し、ネットオークションを通じて、千葉市の男性に2万1000円で販売した疑いがもたれている。男性は、階級章の各部品の偽物をインターネットで仕入れて、組み立てたとみられる。県警は、組み立てが「公記号偽造罪」に、完成品の販売が「偽造公記号使用罪」に当たると判断した。調べに対して、男性は「販売したが、偽造はしていない」と話しているという。
今回、男性が犯したとされる「公記号偽造罪」「偽造公記号使用罪」とは、どのような犯罪なのか。もし仮に「弁護士バッジ」を偽造・販売した場合も、同じ罪に問われるのだろうか。冨本和男本弁護士に聞いた。
「『公記号偽造』と『偽造公記号使用』は、『公務所』の記号に対する社会の信頼を保護するため、犯罪行為とされています。『公務所』というのは、公務員が職務を行う場所のことです。ここでは神奈川県警です」
警察官のバッジなんて、細かいところまで見る機会はそうそうない。本物か偽物かを見破るのも、簡単ではないだろう。
「たいていの人は、警察官のバッジや国会議員のバッジなど、公務所の記号がついていれば、その記号が本物かどうか疑いません。そして、公務所が関わっていると思って信頼するでしょう。『公記号偽造罪』や『偽造公記号使用罪』は、そうした信頼を保護するためにあります」
市販されているような警官バッジのおもちゃと、今回の事例はどこが違うのだろうか。
「『公記号偽造』は、本物の公務所の記号として使用する目的で、公務所の記号を偽造する罪です。子どもがおもちゃとして遊ぶのとは違います。人をだますために使用する目的があることが、罪の構成要件です」
では、弁護士バッジはどうだろうか。
「弁護士バッジの場合、『公記号偽造罪』や『偽造公記号使用罪』は成立しません。弁護士バッジを発行しているのは、日本弁護士連合会です。日弁連は、公共性のある団体とは言えますが、『公務所』とは言えないからです」
では、弁護士バッジなら罪に問われないだろうか。
「弁護士に対する社会の信頼については、弁護士法で保護されています。弁護士でない者が、弁護士である旨を標示したり、弁護士しかできない法律事務を取り扱えば、弁護士法違反という形で別の犯罪になります」
冨本弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp