2015年02月21日 12:41 弁護士ドットコム
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは2月上旬、正規雇用を希望する「契約社員」を正社員にすると発表した。対象となる契約社員は821人という。
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報道によると、同社の契約社員は1年ごとに契約を更新しながら、施設や店舗、イベントなどの運営を担当していた。正社員への登用は2016年4月1日付で、今回の措置により、2016年度の人件費は、十数億円増える見込みだという。
非正社員の「正社員化」といえば、ユニクロが2014年4月、国内のパート・アルバイトを地域限定の正社員に登用すると発表して話題になった。一般的に「正社員登用」は、企業にとってどんなメリットがあるのだろうか。公認会計士・税理士で、社会保険労務士の資格も持つ高橋聡氏に聞いた。
「特に昨年あたりから、非正規社員の正社員化の動きが広く見られるようになってきました。深刻な人手不足が拡大していることから、企業が『人材を囲い込みたい』と強く考えるようになっているからでしょう。ただ、こうした動きの根底には、『ブラック企業対策』という点もあるのではないでしょうか」
ブラック企業対策とは、どういう意味だろうか。
「事実かどうかはさておき、ネット等で『あの企業はブラック企業ではないか』という口コミが広がっただけでも、その後の採用には大変な悪影響が生じます。特に、若年層の採用への影響は大きいでしょう。こうしたリスク回避のために、『従業員にやさしい会社』というイメージアップ戦略として、正社員化を行っているのではないでしょうか」
しかし、正社員化すると、人件費が増えるのではないか。
「企業からみると、正社員化には『解雇が困難』『人件費上昇』というデメリットがあります。けれど、企業イメージの向上で、人材を確保しやすくなります。さらに離職率の低下につながれば、採用コストや研修コストが減少します。
つまり、長期的に見れば、トータルでの人件費の低減につながる可能性があるのです。人材が定着すれば、サービスレベルが向上し、売り上げ増大にもつながるでしょう」
このように高橋氏は述べる。
「また、非正規社員の正社員化の場合、ほとんどが『勤務地限定正社員』になっていることがポイントです。2014年7月にまとめられた厚生労働省の報告書には、勤務地限定や職務限定といった多様な正社員制度を導入する理由として、次のような点が挙げられています。
・優秀な人材を確保するとともに、従業員の定着を図るため
・仕事と育児介護などとのワーク・ライフ・バランスを支援し、女性社員が幅広い職務に従事できる環境整備のため
・安定した雇用の下でのものづくり技能の安定的な継承のため
・地域のニーズに根ざした事業展開のため
このように、企業にとっても、メリットは大きいのです」
勤務地限定正社員が増えているというが、もし、その地域の営業所などが閉鎖されたら、どうなるのだろう。
「勤務地の店舗などが閉鎖されたとき、整理解雇が可能か否かは、大きな問題です。一部では、勤務地限定正社員の増加は、解雇可能な正社員の増加につながるという論調もあるようです。
しかし、さきほど紹介した報告書では、過去の裁判例から、実際は、すぐ解雇可能というわけではなく、勤務地限定正社員の場合も、通常の正社員の場合と同じような扱いで、解雇回避努力として、配置転換を求める傾向が強いと報告しています。
社員側は、『引っ越しか』『退職か』という決断を迫られるでしょうが、すぐに解雇可能というわけではないようです」
高橋氏はこのように話していた。特に、若い世代のために、安定した雇用を確保できる正社員化の流れを歓迎したい。
【取材協力税理士】
高橋 聡 (たかはし・さとし)公認会計士、税理士、社会保険労務士、中小企業診断士
東北大学法学部(労働法専攻)卒業後、本田技研工業を経て、太田昭和監査法人に入社、主に株式公開支援業務、法定監査業務に従事。その後、監査法人トーマツを経て、独立。現在は、創業支援業務、株式公開支援業務をメインに、会計・税務・労務・企業法務に渡る幅広い視点からの助言・支援業務を行う。
事務所名 :高橋聡公認会計士事務所
事務所URL:http://www.takahashi-cpa.jp
(弁護士ドットコムニュース)