満を持して臨んだはずのバルセロナ合同テスト初日にあれだけの不測の事態に陥りながら、2日目のマクラーレン・ホンダは何事もなかったかのように59周を走り込んでみせた。それが可能だったのは、実は初日のトラブルが深刻なものではなかったからだ。
「MGU-Kのモータージェネレーターユニットとギヤボックスをつなぐシーリング部品が、我々の設計通りの品質に到達していなかったんです」
ホンダの新井康久F1総責任者がそう説明するように、ヘレス・テスト後アップデートが投入されたパワーユニットそのものに根本的な設計ミスがあったわけではなかった。
問題の部品はヨーロッパ内の外部メーカーに製造を委託したもので、対策部品はテスト2日目のうちにサーキットへ届き、3日目からの走行に向けてMGU-Kに組み込まれることになった。
しかし、2日目のMGU-Kに使われていたのは初日と同ロットの他個体で同様の問題が発生する可能性があったため、やや慎重な走行を強いられた。
それでも午前中に6周のラン4本を含む38周を走行し、午後は短めのランを重ねて計59周。ヘレスでこなしきれなかった気流データ収集や空力セットアップ変更に対する反応の確認、2種類のフロントウイングを比較するなど、マシン習熟の度合いを進めた。
1日のテストを終えたフェルナンド・アロンソは上機嫌だ。
「まだ開発の初期段階ではあるけど、ブレーキングもギヤシフトもヘレスの時より前進している。まだ先は長いけど、クルマをドライブしてポテンシャルを引き出す素晴らしい1日だった。間違いなくポテンシャルはあるし、正しい方向に進んでいるよ。昨年のスペインGPでの僕自身の予選タイムよりも速いタイムで走ったんだ。ひとりで走っていたら大満足だったはずさ(笑)」
レーシングディレクターのエリック・ブーリエも「想定よりも多く走ることができ、空力データ収集や初めてのセットアップ作業もできて今日の内容には満足している」と笑顔を見せた。
まだ具体的なセットアップ作業は行われておらず、ギヤレシオの設定も初期状態のままで最適化は進められていない。パワーユニットもフルパフォーマンスでは走っておらず、この日の時点ではコントロールライン上で平均してメルセデス勢から10Km/h、フェラーリ勢から5km/h遅かった。
そんな“素”の状態で走っているにもかかわらず、MP4-30はトップからそれほど大きく離されることのないタイムを刻んでいる。コースサイドで各車の走りを常に見ているフォトグラファーも「マクラーレンは高速シケインでメルセデスよりも機敏な動きをしている」と感心していた。もちろん燃料搭載量の違いという要素があるにせよ、MP4-30の素性の良さを改めて印象づけたバルセロナ合同テスト2日目だった。
「今日は、かなりたくさんのデータを収集しました。これから残り2日間に向けて、エンジニアたちは“宿題”の分析で大忙しですよ。ここからどれだけパフォーマンスを上げられるか、時間との闘いです」
そう語る新井 総責任者の表情にも笑顔が戻っていた。新時代を歩き出そうとするマクラーレン・ホンダの生みの苦しみは、ようやく峠を越えたのではないだろうか。
(米家峰起)