2015年02月20日 17:21 弁護士ドットコム
春は出会いと別れの季節だが、企業の人事担当者の間では「年度末は解雇シーズン」と言われているという。新年度の人材採用に備えて、会社が不要と判断した人をリストラしようと考えるためだ。逆に、労働者の側からみれば「解雇されるリスク」が高まる季節なのだ。
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そんな解雇シーズンを迎え、労働問題に取り組むNPO法人POSSE(事務所・東京都)には、会社から解雇や退職勧奨を言い渡された人の相談があいついでいる。この1カ月間で20件近くの相談が寄せられているという。
POSSEでは多くの電話相談に集中的に答えるため、2月22日に「解雇・リストラ労働相談ホットライン」を実施する。その前に、POSSE相談員の坂倉昇平さんに、最近の相談事例や注意すべきポイントを聞いた。
「今辞めれば、退職金を給料1ヵ月分上乗せしてやる。3月末までに辞めなければ解雇だ」
100人規模の中堅IT企業につとめる40代男性に、会社からこんなきつい言葉が投げかけられたという。坂倉さんによると、この男性は、ある日突然、これまで全く経験がない仕事をする部署に異動させられたそうだ。いわゆる「追い出し部屋」作戦だ。
男性は経験がないため、成果をあげられなかった。やる気をなくしたころを見計らうようにして、会社は退職を勧めてきた。納得できなかった男性は、POSSEに相談に訪れた。弁護士を紹介され、現在は雇用の継続を求めて会社と係争中だという。
POSSEにふだん寄せられるのは、20~30代の若者からの労働相談が多い。しかし、年度末の「解雇シーズン」には、若者だけではなく、40~50代の中高年からも相談が寄せられる。
もし会社から退職を迫られたら、どうすればいいのか。
坂倉さんは「『退職届を出せ』『辞めろ』と言われても、すぐには応じないことが重要です」と語る。口頭でも「同意」をしてしまうと、その後撤回させることは基本的には難しく「自己都合退職」の扱いとなって、雇用保険がすぐに受け取れなかったりするなど、不利な条件を強いられる可能性があるという。
また、雇用主が労働者を解雇するためには、厳しい要件をクリアする必要があるが、多くの会社はその要件を満たしていないという。そのため、坂倉さんは、会社が解雇しようとしている証拠を記録することを勧めている。「『辞めろ』と言われたときの状況や会社側の解雇の理由を録音するなどして、証拠を残すことができれば、後に裁判などで争い、解雇の撤回、もしくは、一定の生活補償を得ての退職をする際に有効だ」と語る。
坂倉さんは「解雇にしても退職の勧めにしても、証拠を残しながら、拒否をしたり、考えさせて欲しいなどと伝え明言を避けてその場をしのぎながら、私たちへ早めに相談してほしい」と話している。
POSSEは、2月22日午後5~9時、解雇・リストラ・退職勧奨などのトラブルを抱えた人に向けて、無料の電話相談(0120−987−215)を実施する。
専門のスタッフが、法的な点を解説したうえで、本人の希望に応じて、労働組合や労働問題にくわしい弁護士などの相談先を紹介する。また、退職した人に対しては、雇用保険の受給方法を伝えるなど、退職後の生活を立て直すためのアドバイスも行うという。
(弁護士ドットコムニュース)