2015年02月16日 12:01 弁護士ドットコム
大阪産業大学は1月下旬、ほぼ1年前に行った入学試験に出題ミスが見つかったと発表した。昨年2月1日の試験で「日本史」と「政治・経済」の各1問にミスがあった。これらの問題を全員正解としたところ、1人が追加合格の判定となった。だが、追加合格者は、すでに他の大学に進学しており、入学を辞退したという。
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大学入試の出題ミスはたびたび起こっており、昨年12月には武蔵野大学でも同様のケースが発生。1年前の入試に出題ミスが判明し、3人を追加合格にしている。
時間が経ってから追加合格になっても、「後の祭り」というケースもある。そうした場合、大学側に慰謝料を請求できないだろうか。宮島繁成弁護士に聞いた。
「大学側を訴えて慰謝料をもらうためには、おおまかにいうと、大学側の『不法行為』によって、自分が損害を受けたと証明する必要があります」
宮島弁護士はこう指摘する。そのためのポイントは、どういう点だろうか?
「まず、大学側に過失や故意があることが必要です。大学側にはミスのない正しい問題を作る義務があるでしょうから、これに違反したことによる過失はありそうです。
受験者が『この大学に是非とも入学したい』という強い思いがあった場合、その精神的ショックを損害と評価することも可能でしょう」
そうすると、今回のケースなら、「大学の出題ミスのせいで不合格になり、精神的ショックを受けた」と言うことができれば、慰謝料をもらえる可能性が出てくるわけだ。
「そうですね。ただし、『出題ミスのせいで不合格になった』という因果関係の立証は、厳密にいうとかなり難しいはずです。仮に出題にミスがなかったとして、必ずその人がその問題に正解していたとは言えませんからね。つまり、出題ミスと採点ミスは違うということです。
全員正解とするとか、問題自体をなかったことにするとか、出題ミスの処理は大学が裁量で決めていることです。つまり、追加合格者という地位は、あくまでも大学の裁量が前提となっている、という点がポイントです」
宮島弁護士はこのように指摘していた。
過去の入試の出題ミスでは、学校側が非を認め、追加合格者に慰謝料を支払ったケースもあるようだ。しかし、もしそれが裁判で争われた場合、厳密に因果関係を証明するのは、意外と難しいのかもしれない。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
宮島 繁成(みやじま・しげなり)弁護士
日弁連子どもの権利委員会、同いじめ問題対策プロジェクトチーム。その他、スポーツ問題や法教育にも取り組んでいる。
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