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<消費税>新聞に「軽減税率」を適用すべきか? 税理士の多くが「不要」と回答

2015年02月15日 10:41  弁護士ドットコム

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自民・公明両党は、2017年4月の消費税引き上げにあわせて、生活必需品については消費税率を低く抑える「軽減税率」の導入を目指している。適用する品目について具体的な検討を始めており、今秋までに具体的な制度案を取りまとめる予定だ。


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この制度については、全国の新聞各社が加盟する日本新聞協会が、新聞にも軽減税率を適用するよう求めている。新聞が民主主義社会の発展と国民生活の向上に寄与していることや、欧州各国でも新聞への税率が低く抑えられている点を理由として挙げている。



一方、新聞への適用については「なぜ新聞を優遇する必要があるのか」「新聞は生活必需品なのか」「報道機関が政府におもねるべきではない」といった否定的な意見も根強い。はたして新聞に「軽減税率」を適用する必要はあるのだろうか。税の専門家である税理士77人に聞いたところ、大半が「不要」と回答した。



「新聞に軽減税率は必要か」という質問に対して、「新聞に軽減税率は必要」「新聞に軽減税率は不要」「そもそも軽減税率は不要」「どちらともいえない」という4つの選択肢から回答を選んでもらった。その結果、回答者の約7割を占める54人が「新聞に軽減税率は不要」と答えた。また、27%にあたる21人が「そもそも軽減税率は不要」と回答した。一方、「新聞に軽減税率は必要」という意見を表明した税理士は2人(3%)だけだった。



●不要派「『社会の木鐸』としての信頼性が低下している」


「新聞に軽減税率は不要」と答えた税理士は、次のようなコメントを寄せている。



「マスコミをはじめ、軽減税率のメリットだけが強調される傾向にあると思います。税率構造が複雑になるほど、我々の商売的には良い面もあるのかもしれませんが・・・。個人的には複数税率の導入は、対象品目の選定が時代の流れなどについていけないことや、政治的圧力により歪められるおそれがあるなど、問題があるため導入に対して反対です」(藤井道明税理士)



「日本新聞協会会長(読売新聞グループ社長)の諮問を受けて発足した『新聞の公共性に関する研究会』が2013年9月、消費税率引き上げに際して新聞に軽減税率が適用されるべきだとする意見書(http://www.pressnet.or.jp/keigen/files/shimbun_koukyousei_ikensho.pdf)を発表しています。



その意見書には次のようなことが書かれています。


・新聞は日本の誇るべき文化の維持と民主主義の健全な機能にとって不可欠


・新聞の生活への密着度は、衣食住の必需品につぐ


・憲法の「表現の自由」の保障という側面からも新聞は重要



昨年の消費税増税をめぐって、新聞社がこぞって消費税増税と軽減税率の必要性を執拗なまでに喧伝したことは記憶に新しいと思います。恣意的な世論操作は見苦しく、もはや新聞に正確な情報の伝達能力や、『社会の木鐸』としての信頼性を求めるべくもなく、昨今の新聞離れからも衣食住につぐ必需品とは笑止千万で、まったく話になりません。恥を知れと言いたいです」(近藤学税理士)



「新聞が衣食住に次ぐ必需品?信じられないおこがましさですね・・・。ネット社会が発展した今、新聞の情報媒体としての役割は以前より薄らいでいます。何より、特に大手新聞社は今や政府&官僚の応援広告媒体に成り下がっています。弱者たたき、揚げ足取りのいちゃもん媒体に成り下がっている・・・軽減税率なんてもってのほかです」(山本修平公認会計士)



「個人的には、そもそも軽減税率の導入自体に反対と思っているが、導入した場合、軽減税率の対象となるのは相応の高い必要性・公共性が必要だと思う。



たとえば、日々の食材は生きていくために必要だし、幅広い世帯を対象とする意味で公共性もあるが、高級酒は必要性も公共性も乏しいから不要という具合に。新聞の場合、高い公共性という点はある面では理解できなくはない。



ただ、そのような高い公共性を通じた民主主義の発展を謳うのであれば、国民全体の理解を得られる現状よりも公平性・透明性の高い自主規制を新聞社サイドに求めるべきであろうと思う。



たとえば、現状の記事は無記名であることが多いが、取材記者や編集責任者の名前を明記する。不祥事が起きた場合、その責任の基準や取り方を明確にする。特に政治的な取材をするときは、世論調査の票数に応じた記事量とし、恣意的な政的誘導を避けるなど。



要するに、軽減税率の対象を主張するなら、新聞社側もただ現状で放置するのでなく、国民全体が納得する高い公共性・透明性・公平性を確保する制度を構築すべきと思う」(冨田建税理士・不動産鑑定士)



●軽減税率自体が不要派「消費税の立法趣旨にぶつかる」


「そもそも軽減税率は不要」と答えた税理士は、次のようにコメントした。



「軽減税率の可否を議論すると、消費税の立法の趣旨と矛盾が生じるかと思います。消費税率は上げたいが、生活必需品は軽減税率といような曖昧な線引きをしていると、政治活動の格好のネタになりかねません」(杉山靖彦税理士)



●必要派「知識を得る手段は生活必需品だ」


一方、「新聞に軽減税率は必要」と回答した税理士は、次のような意見を示している。



「OECDの調査で、読書する時間が文章の読解力に関係しているという結果があります。活字離れを止めるためにも新聞や書籍について軽減税率を適用すべきと考えます。知識を得る手段は生活必需品ではないでしょうか」(三宅伸税理士)


(弁護士ドットコムニュース)