米国の動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」が、2015年秋に日本でのサービスを開始すると発表し、「テレビ震撼!」(東洋経済オンライン)、「テレビ業界の猶予はあと5年だ」(Newspicks)と、各メディアがこぞって取り上げている。
「テレビ受像機で愉しむ時間を奪い合う」
「ネットフリックス」は、ネット上で映画やドラマを配信するサービスだ。約50か国でサービスを展開し、米国で3000万人以上、全世界で5000万人以上の会員を有している。
米国での料金は月7.99ドル。HD画質、4K画質など高画質で視聴でき、ネットフリックス対応テレビやスマートフォンなどで視聴することも可能だ。日本でも同様にスマートテレビ、パソコン、スマホなどに対応し、日本のドラマ、映画、アニメなども配信する予定となっている。
日本のテレビに「BS」「CS」のボタンがついているのと同じように、米国のテレビには「Netflix」ボタンがついているものがある。日本ではスマートテレビはまだまだだが、ネットフリックスのようなコンテンツが先行することで、一気に普及する可能性もある。
「これから市場に出るテレビ受像機は、ネット動画を見るための操作が格段によくなることだ。ユーザーや視聴者には便利になることが、放送収入に頼りきっているテレビ局にとっては深刻な事態を引き起こすという、皮肉な状況に陥る」(Newspicks)
博報堂のメディア定点調査2014によると、1日にテレビを視聴する平均時間は「156.9分」だった。この数字は4年前の「172.8分」からは約15分短くなっているが、前年比では5分ほど長くなっているため「下げ止まり」を指摘する人もいた。
しかし若年層の「テレビ離れ」は深刻で、特に20代は男女ともに、平均時間より約40分も短い「117.1分」だ。この状況で、さらにテレビがネットにつながるようになったらどうなるか。
「ネットフリックスのビジネスモデルは、いわゆる『テレビ放送』とは異なるものだが、しかしテレビ受像機で愉しむ時間を奪い合うという点では、ライバル関係といえる」(東洋経済オンライン)
「つまらない番組」の淘汰が進む?
こうした報道を受けて、ネット上では「期待したい」という声が出る一方で、「またテレビ崩壊説か」という見方も出ている。確かに、テレビに対抗する新サービスは「毎回騒がれて何も起きず」であり、今回も「免許に守られた放送局が5年で変われるのだろうか」という意見を持つ人も一定数いる。
しかし近年、通信環境やデバイスの進化は急速に進んでおり、参入のタイミングとしては上々だろう。コンテンツの多様化や、参入が硬直化したテレビ業界の変革の促進を期待する人が多く、
「リモコンに両方のボタンがあったら、作ってるのがテレビ局かネットフリックスかなんて、視聴者はどうでもいい。面白いほうを見るだけ」
「テレビ(局)は電波っていう利権に乗っかっているだけにしか思えん。ネットフリックスも日本で爆発的にユーザーを獲得すれば、企業のマーケティングも一層変わるし、代理店も変わらざるを得なくなる」
といった声が見られる。テレビというデバイスの進化をキーに挙げている人も多く、「リモコンに(ネットフリックス)ボタンがついたら確実に流れは変わるよね。つまらん番組は淘汰されていく」といった声もみられる。
すでに「Apple TV」を使っているという30代男性に話を聞くと、確かにテレビで視聴するのはYouTubeの動画や「Hulu」のような配信サービス上の動画ばかりで、「日本の地上波の番組はニュースくらいしか観なくなりましたね…」と話す。
ネット上でも、「ザッピングして相当面白い番組やってなければ即Hulu」「既存のテレビはほとんど観なくなった」といった声は多い。ネットフリックスの参入でこうした流れが加速すれば、視聴者の減るテレビ局はどう太刀打ちしていくのだろうか。