2015年02月12日 16:51 弁護士ドットコム
今年もバレンタインの季節がやってきた。デパートの売り場は人気チョコを求める女性客で混雑し、毎年恒例の盛り上がりを見せているが、一方で、このムードを苦々しく思っている人もいるようだ。
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東京都内の旅行会社に勤めるIさん(20代)の職場には、女性従業員がお金を出し合って、男性従業員のためにチョコを買う「バレンタイン基金制度」とでも呼ぶべき習慣がある。強制参加ではないが、職場では「払って当然」という空気があるのだという。
職場の空気を悪くしたくないので、Iさんは毎年、イヤイヤながら3000円ほどのお金を支払っているという。だが、こうした形でお金を支払わせることは、犯罪といえないだろうか? 堀井亜生弁護士に聞いた。
「職場の同僚に、チョコ代を要求する権利はありませんし、Iさんに支払う義務もありません。
そこで、もし仮に、女性従業員が『チョコレート代を支払わないと会社にいられなくなる』と告げるなどして、強制的にお金を支払わせているのだとしたら、『強要罪』や『脅迫罪』といった犯罪になる可能性があります。
しかし、話を聞く限り、Iさんは『費用負担を断ったら、女性従業員間の人間関係が悪くなる』といった不安から支払っているのでしょう。
その程度だと、支払いの『強要』や『脅迫』があったとは言えず、犯罪にはなりません」
もし、チョコ代を支払わなかったことで、同様に無視や嫌がらせをされた場合はどうだろう?
「もし、それが原因で無視や嫌がらせなど、職場でのいじめ行為に発展した場合には、民法上の『不法行為』となり、慰謝料などの問題となってくるでしょう」
従業員が不満を抱く「バレンタイン基金制度」を放置していることについて、会社側の責任を問うことはできないだろうか?
「もし、そのような制度と関連して『強要』『脅迫』『いじめ』があれば、制度を放置した会社にも法的責任が生じてくるでしょう。
しかし、従業員が自発的に発案した親睦のための取り組みで、『参加しない』という選択もできるならば、会社に『職場のバレンタイン基金制度を禁止する義務』は生じないと考えます」
このように堀井弁護士は説明する。
「ただ、最近では、Iさんのような女性従業員に対する配慮なのか、『社内でのバレンタインデーチョコのやり取りを禁止する』といった会社もあるようですね」
一切禁止というのも、それはそれでやり過ぎでは?
「そうですね。もし、オフィス内でチョコを渡した『違反者』に懲戒処分を下すというような極端なやり方をしているなら問題です。しかし、会社を離れた個人間のやりとりを禁止しているわけではありませんし、オフィス内での受け渡しを禁止するだけなら、法的に問題はないでしょう」
堀井弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
堀井 亜生(ほりい・あおい)弁護士
第一東京弁護士会所属 「ホンマでっかTV!?」の法律評論家としてレギュラー出演。その他にも「とくダネ!」「ノンストップ!」などメディアに多数出演。著書に「フラクタル法律事務所の離婚カウンセリング~答えが出るノート~」がある。
事務所名:弁護士法人フラクタル法律事務所
事務所URL:http://www.fractal-law.net/