2015年02月12日 10:11 弁護士ドットコム
同棲していたカップルが破局した場合、ペットはどちらのものになるのか——。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、同棲相手と別れ話をしている女性から相談があった。2人は飼い猫の「親権」を争っていて、男性の側が「法廷で争ってでも猫を連れて行く」と主張しているのだという。
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この女性によると、猫の購入を提案したのは男性のほうで、ブリーダーとの購入のやりとりも担当していた。さらに、猫の飼育費用もほぼ全額、男性が出していたそうだ。動物病院の診察券も、男性の名義になっているという。
男性の側は、別れ話を考え直すことを条件に、飼い猫と一緒に暮らすことを提案している。しかし、女性は「猫を人質にとられているようなもの」「絶対に猫を手放したくありません」と書き込んでいる。
今回のケースで、女性の言う「飼い猫の親権」を手に入れられるのは、どちらなのだろうか。澤藤亮介弁護士に聞いた。
「まず、現在の日本の法律では、猫などのペットは『人』ではなく、『物』に分類されます。正確に言えば、不動産以外の財産である『動産』です。ですから、猫の『親権』という考え方は、認められていません」
澤藤弁護士はこう説明する。では、裁判で争うとしたら、どんな扱いになるだろうか。
「猫の場合は、離婚時における子どもの親権争いのような議論も当てはまりません。2人が別れるときにどちらが猫を引き取るかは、『物』である猫の『所有権』がどちらに帰属するのか、という問題になります」
判断のポイントは、どこにあるのだろうか。
「猫の購入代金を誰が支払ったかが、問題とされるでしょう。購入した時期にもよりますが、今回のケースのように、男性が自分の資金で購入していたなら、男性の所有権が認められます。逆に、女性が自分で支払っていたなら、女性の所有権が認められるでしょう」
だが、最近はペットを家族扱いする人もいる。「物」として扱うことに違和感をおぼえる人もいるのではないか。
「そうですね。動物などのペットの重要性は、以前に比べ飛躍的に高まっています。家族同然と思って接している方も多いですよね。そして、確かに、近年の動物愛護管理法改正などによって、以前よりも虐待からの保護について手厚くなってきています。
しかし、これは、刑法上の話です。民法上は、依然として『物』扱いのままです。つまり、判断は変わりません」
ただ、今回のような問題は、増えているのではないだろうか。
「私の事務所でも、離婚事件でペットの帰属が問題となるケースが増えています。今後も、離婚時や内縁関係解消時におけるペットの取り合いの案件は、増加していくでしょう。
そうした現状にもかかわらず、裁判所は、法律に拘束される以上、ペットを『物』と捉えて判断せざるを得ません。アメリカでは、ペットの共同親権を設定して離婚するという例もあります。日本においても、このような議論を本格化させる時期が来ているのではないでしょうか」
澤藤弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚、不倫問題、労働問題などを中心に取り扱う。iPhoneなどのデバイスが好きが高じて、ITをフル活用して業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:新宿キーウェスト法律事務所
事務所URL:http://www.keywest-law.com