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就活生はあくまで「お客様」 採用活動は最も便利な会社のイメージアップ

2015年02月11日 15:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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経団連は昨年、新卒学生の「採用選考に関する指針」を発表したことで、これまで大学3年生の12月となっていた就活解禁の時期を、2016年卒業の新卒採用から大学3年生の3月まで繰り下げることとなった。この発表は就活生のみならず、採用活動をする企業にも大きな影響が出ると言えるだろう。

学生が就職活動の中で苦しい思いをするというのはよく聞く話だ。何十社、何百社とエントリーしてやっと1つの会社に巡り合う。では、採用活動を行っている企業側にはどのような苦労があるのだろうか。今回は「人事部だって苦しいんだ!」をテーマに、採用担当から見た就職活動の実態を聞いてみた。

採用活動は、企業をよく知ってもらうためのツール

採用活動は人事部の仕事だけのように思えるが、実は多くの社員が関わる会社の一大イベントなのだ。例えば、毎年採用活動にキャッチフレーズを付けている会社が多いと思うが、そこ言葉ひとつ取っても、株主に向けて説明している会社の理念とずれていないか、社外に公表しているものに沿っているか一語一句広報と確認するという。ひらがなで書くか、カタカナで表現するか、点の打つによってもニュアンスが大きく変わることもあるため、細心の注意を払っている。

パンフレットやポスターに載せる商品は最新のもの、会社が打ち出していきたいものが掲載される。一度に何万人もの人が目にする冊子は会社にとって最も有効な宣伝ツールなのだ。もちろん、面接では社員の時間を拘束することになる。そのために、人事部は半年以上前から面接を担当してもらう社員を探し、スケジュールを空けてもらえるようにお願いしている。その社員たちには話し方のトレーニングを受けてもらい、学生に良い印象を持ってもらう。それは、単に採用活動のことだけ考えているのではなく、社員を通して会社のイメージアップを図っているのだ。

よく、説明会に参加するとその会社の商品がもらえたり、中には不採用通知とともに商品を送ってくる会社もある。それは学生に申し訳ないという気持ちで渡しているのではなく、製品のPRとして配っていることが多いと語る。

採用活動は想像以上にコストがかかる

採用活動で最初の難問となるのが、エントリーシート(ES)とSPI試験の突破だ。SPI試験はよく「足切り」に使われるため、勉強する必要があると言われている。SPI試験で見るのは「地頭の良さ」だと断言するには理由がある。

「採用活動には、多くの社員が関わっており、学生にテスト1つ受けてもらうにも莫大な費用をかけている。1人に対してお金も時間もかけなければならないため、そもそも地頭の悪い子にそのコストをかけている余裕はない。」

SPI試験の結果から、実際にエントリーシートに目を通すのは30分の1程度だという。面接当日に連絡もなく欠席する学生も少なくなく(俗にブッチするいう)、その後突然電話がかかってきて面接を受けさせて欲しいと訴えてくる人もいるとか。だいたいは、面接当日は別の会社の試験と重なっていて、その会社が落ちてしまったがために連絡をしてくるケースが多いとのこと。自分勝手でありえない話なため、面接を受けさせることはないが、そのような学生にも「今後も就職活動頑張ってくださいね」と丁寧な対応をするように心がけている。

内定式に出席してもらうまではあくまで「お客様」

どのようなときにも、学生のことを第一に考え、採用の有無にかかわらず気持ちよく帰ってもらう。これが採用担当にのモットーだと語る。その背景には、「学生はお客様」という考えがあるからだという。

入社してほしいと思う学生に対しては、とにかく褒めまくり、その学生がアピールしているポイントが、弊社がほしいと思っている人材とマッチしていると何度も語り、洗脳させるのだという。他社から内定をもらっている学生に対しても、「是非、御社で働きたい」と思ってもらうために手厚いフォローも忘れない。内々定の後は、他社に逃げないように頻繁に学生とコンタクトを取り、懇親会に力を入れる。まだ内定受諾をしていない学生には特に目をかけ、社員と話したいと言われれば社員を用意し、会社案内をしたいと言われれば1日付き合う。そこまでして、優秀な学生を確保しているのである。

不採用にした学生へのフォローも忘れない。メールや電話でなぜ落とされたのかと聞いてくる学生や、企業批判の連絡に対しても1人1人丁寧に対応している。そこまで学生に時間をかけるのは、企業にとって採用活動が「将来のお客様を獲得する最高のチャンス」だからである。一度に何万人と接することができる採用活動は、企業のことを知ってもらう良い機会である。何十年後、学生に購買力がついたときに自社を選んでもらう。それが企業を長く発展させるのに不可欠であり、「将来のお客様」のためなら、自分たちの時間を割いても望むことは何でもするのだという。

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